第2話
「終わりましたよ」
その言葉に、私は安堵する。
パックの中身はいつの間にか空になっており、ゆっくりと私の身体から針が抜かれる。
針の刺さっていた場所を軽く押え、止血のテープを貼られる。
私は上半身を起こすと、服を正そうと腕を動かす。その時、私は気づいた──無意識に緊張していたのだと。
強ばった身体を無理やり動かし、上着を羽織る。
荷物を持って、すぐにその場を離れる。
待合室の長椅子へと行き、壁に寄りかかるように座る。
私の渇きはピークに達していた。舌は渇き、粘っこい唾が口を侵す。
それから数十分……再び名を呼ばれ、私は薬を貰う。
「帰ったら、この薬を飲んでくださいね」
そう言われ、私は頷いて薬を受け取る。
自動ドアを潜り、外へと出る。暖かかった建物の中とは違い、冷たい風が頬を撫で去る。
(早く……!)
私は喉の渇きを一刻も早く潤したくて、帰路への足が早まる。
普段はさほど気にしない信号待ちですら、イラつくほど私の身体は欲していたのだ。この渇きを満たす手立てを。
道行く人々を横目で見ては、私は必死にこの渇きに耐える。
信号が青に変わり、横断歩道を渡る。
(早く……、早く……!)
私は飢えていたのだ。この渇きを解決するものに。
▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁
足早に自宅へと帰り着けば、私は先程貰った薬を取り出す。
そして言われた通りに、大きめのカップに白湯を作って、薬と同時に一気に飲み干せば、ようやく喉の渇きから開放された。
私はそのまま布団へと向かい、突っ伏すように倒れ込む。
そして呟くのだ。
「もう、点滴嫌だぁ……」
こうして、人生初の点滴とその副作用は、幕を閉じたのだった。
飢え 斐古 @biko_ayato
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