ここではない、どこかの――中華世界にも似た世界、そのムーア大陸のカナン平原という地で、ひとりの英雄が生を享(う)けた。
その英雄――趙武が、生まれた地の帝国の中で育まれ、やがてその才を伸ばして軍人となり、そしてカナン平原の諸国を巻き込んだ乱世の中を生き抜き、勢威を高め、カナンの歴史を動かす存在へと大きく飛翔する。
この作品は、その趙武の、少年期、青年期での人々との出会い、軍人として初陣を戦う中で、終生のライバルと出会い、争覇し、そしてその描いた「絵」を受け継いだ子孫の道行き――栄枯盛衰を描いた、大河ドラマとも言うべき作品です。
きちんとその「果て」を描いているところが、この作品に――画竜に点睛を与えていると思います。
カナンの歴史を動かした一陣の風が、どのように吹き、そして去って行ったのか――それをご覧になってはいかがでしょうか。