第3話
学校の教室くらいの大きさの店内に、2名の店員しかいない。今私の側にいる人と、カウンターにいる人だけが、働いている。この人を撒きたい。
「この生地は肌だりがよくて、退職される方には喜ばれると思いますよ」
「そうなんですか」
無視をしたいのに、返事をしてしまった。
「柄的にも、青や緑などの色なので、男女ともに使われているものだすし」
「そうなんですか」
店員の方を見ることもなく、空返事のような声を出して、どうにか離れてほしい。でも、私以外の客は、カウンターで商品を受け渡し来る人以外いなかった。コピー用紙の商品を歩きまわっているが、商品が見当たらない。
「その画像の商品より、こちらの商品のほうが、喜ばれますよ」
「なんで、そんなこと言われないといけないんですか。木本さんに会ったことのないのに」
「その端に、書かれている特徴の方なら、こちらの方が好まれると思ったので」
コピー用紙の端に、退職する木本さんの特徴を書き込んでいた。それも、最初に、退職される木本さんという名前を書いていた。
繊細、汗っかき、痩せ柄、緑や青いものを愛用しているなど、考える限りの言葉を書き込んでいた。
「その商品をください」
「ありがとうございます。では、レジカウンターまでお越しください。綺麗にラッピングしますね」
店員はカウンターまで、商品を持って行った。私は鞄から財布に手を伸ばした。ここから払うんじゃない。値段を聞いていない。課長から預かった封筒の3,000円を握る。
レジに表示された数字を見てほっとした。
「こちらの商品、2,855円になります。」
少しほっとした。預かっていた3,000円を出した。
おつりを受けとって、ラッピングには5分かかると言われ、店内を歩いて待つことにした。目の前に、コピー用紙の商品を見つけてしまって、何か残念な気持ちが浮かんでしまった。あの店員の罠にはまって気がしてしまった。
「仕上がりました」
渡された商品は凄くて丁寧にラッピングがほどこされた。
お礼を言って、店内を出た。なんか変に疲れてしまった。でも、最初の目的の商品ではなかったが、買うことができてうれしかった。
選んで、買って。 一色 サラ @Saku89make
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