古山琴音

 ひとりで『か行』をコンプリートしていたケーちゃんが、K. K. のイニシャルを卒業する。

 コンプリート恵子が、ただの恵子になる。冗談みたいだけど冗談ではない。文字通り『只野ただの』という苗字になるのである。ようするに、結婚するのだ。おめでたい。


 ケーちゃんから話を聞いたとき、立ち消えになってしまった文芸サークルの『Dear K』企画を思いだした。そして、やるなら今しかないと思った。


 物語でもエッセイでも手紙でもいいのは当時とおなじ。ただし、必ずケーちゃんを登場させること。今回は名前をだしてもいい。それから『お祝い』だというのを忘れないこと。という条件で、さっそく四人の『K. K.』に連絡をとった。

 当時のサークル部長で、現在も創作をつづけている加納かのうさんはもちろん、みんなふたつ返事で引き受けてくれた。さすがである。


 そうして集まったデータ原稿それぞれに、いろんな意味でのけぞった。


 まず、見た目カタブツっぽいのにキラッキラのファンタジー書きである加納さんは、普段より三割、いや五割増しでキラッキラだった。


 それから、文芸サークルの編集要員だった木元きもとさんは書くことに慣れていないのだろう。文章から照れくささがにじみ出ている。けれど、それとおなじくらい、おめでとうという気持ちもにじんでいる。素直だ。ものすごく素直だ。なんだろう。非常にほほ笑ましい。


 ここまでは、まあ想定内といってもいいのだけれど、宮藤くどうさんと剣崎けんざきさんにはとびっきり驚かされた。

 サークル時代もいいコンビで、てっきり当時からつきあっているものだと思ってたんだけど、どうやら違ったらしい。


 えーっ、どうしよう、これ。


 しっかりケーちゃんを祝いながら、自分たちのこともちゃっかり祝っていて、でもやっぱりケーちゃんを祝福している。

 事実をうまく盛りこみながら日常ミステリーにしあげているのだけど、ひとつの物語を、ふたりがそれぞれの視点から語っているのもおもしろい。

 って、そうじゃなくて!

 これはやられたなあ。てか反則だよー。

 知っちゃったからには、ふたりのこともお祝いしたいじゃんか。


 ほんとうは、ケーちゃんには内緒にしてサプライズにするつもりだったんだけど……うーん。

 彼女の場合、サプライズのよろこびより、書き手として参加できなかった残念感のほうが強くなりそうだし。

 うん。やっぱり、こっちはケーちゃんにも参加してもらおう。


 よし! そうと決まったら、さっそく動かないと。まずは加納さんと木元さんに追加原稿の依頼だ。それから、一冊にまとめるか、それとも二冊にわけるか。ふたりの知恵とスキルも貸してもらおう。


 結婚して『K. K.』を卒業するケーちゃんと、結婚しても『K. K.』の宮藤さんと剣崎さん。


 お祝い企画『Dear K』再々始動だ。



     (おしまい)


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Dear K 野森ちえこ @nono_chie

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