第4話 妻、動揺する
「がははは! ヒーロー共この人質がどうなってもいいのか?」
「何て非道な! 今すぐその人質を解放しろ!」
そこはとある採掘現場であり、そこにはヒーローの5人と世界侵略をする悪の組織行動隊長の魔物1体と兵士魔物数体、そして物凄く動揺しているがそれを隠している悪の女大幹部こと妻がいた。
僕はと言うと、今日は何故か悪の組織行動隊長に人質として捕まって戦場にいる。
妻は何度か僕の方をチラチラと見て来て、無事を確認してきており僕がいる事に物凄く動揺と、行動隊長への殺意を肌で感じていた。
またヒーロー側の泉ちゃんも、僕が人質だと分かり驚いているのと同時に妻へ怒りの視線を送っていた。
「(何で俊平がここにいるの!? てかあの野郎、分かってやってんのか? もしそうなら、ぶっ飛ばす!)」
「(どうして先輩が!? やっぱりあいつを先輩の傍に置いておく訳にはいかないわ!)」
すると遂にヒーローのレッドとブルーが隙をついて、僕と行動隊長を離し戦闘が開始される。
僕は直ぐにその場から離れようと逃げるも、途中で足がもつれて転んでしまう。
妻や泉は僕が逃げる姿を見て、安堵の息をつく。
するとグリーンが行動隊長に放った攻撃をそいつが弾くと、流れ弾が妻の方へと向くが妻は気付いていない。
僕はそれを見て直ぐに考えるよりも先に体が動き、妻へと一直線に走った。
そのまま僕は妻に覆いかぶさる様に押し倒した直後、弾かれた攻撃が真上を通過し目先で大爆発を起こした。
妻は突然の事に、言葉を失いただ僕の方を仮面越しに見ていた。
「大丈夫……ですか?」
「……え、えぇ……何でこんな事を? 私は人類の敵。庇う必要はないし、仮に直撃してもダメージなどない」
妻は悪の大幹部として顔を逸らしながら僕に問いかけて来た。
「そうですよね……でも何と言うか、見過ごせなくてつい体が動いてしまって。これじゃ、ダメですかね?」
「……ダメに決まってるでしょ」
ボソッと妻は何かを呟いたが、僕には聞こえなかった。
その後、妻は僕を優しくどかし立ち塞がる様に立つと、そこにレッドとブルーが現れる。
「今すぐにその人を開放しろ!」
「言われなくても、もうこの人質は不要よ!」
そう言って妻はその場から逃走するが、レッドが追って行く。
僕は残ったブルーに保護された直後、眠る様に意識を失ってしまった。
次に目を覚まし起き上がると、そこには泉と青石が居た。
そして更に奥には、緑髪の青年が桃髪の少女に怒られている姿が目に入った。
「ここは?」
「先輩! 良かった、どこか違和感とかありますか? 痛む所とか?」
「大丈夫だよ。それよりもここは?」
その後泉から説明を受け、僕は治療施設に運ばれたらしくそこで検査などを一通り受けたのだと知る。
泉や青石がヒーローである事は伏せられており、戦闘に巻き込まれて意識を失ったので運んで来たと小声で泉から事情を聞いた。
そして特に異常もなかったことから、そのまま家へと帰る仕度をし泉達にお礼を言って、その場を後にした。
「先輩、本当に大丈夫かな?」
「本人が大丈夫って言ってんだ。大丈夫なんだろ」
「青石は冷たいね。一応先輩だよ?」
「俺はただ、お前のあの先輩への態度が気に入らないだけだよ……」
小さくそう呟くと青石はその場から立ち去って行くが、泉は暫く風谷の後ろ姿を見続けた後に追いかけて行くのだった。
僕が家に着くと、まだ妻は帰宅しておらず玄関も閉まっていた。
家に入り、僕は何事もなかった様に夕飯の準備など妻が帰って来るまでにいつもの状態を作り始めると、途中で玄関からチャイムの音が鳴った。
僕は直ぐに玄関へと向かい、鍵を開け「おかえり」と口に出そうとする間もなく突然妻が抱き着いて来た。
「ど、どうしたの、エリナ?」
「……」
妻は僕の問いかけに何も答えず、ただずっと抱きついたまま無言の時間が暫くすぎる。
僕は暫くしてから一度妻を離し、話そうとするがなかなか離してくれず引っ付いたままであった。
だが、このままでは何も変わらないので少し強引に引きはがすと、妻の目元が泣きじゃくった跡なのか少し赤く腫れており、鼻頭も少し赤くなっていた。
僕は直ぐに妻がどうしてこんな状態か理解した。
それは僕が人質に取られてしまい、更には自分の命を顧みず妻を助けたからだ。
確かに人質に関しては僕が悪いとは言えないが、死ぬ可能性があったあの状況であそこまでした事に、たぶん妻は怒り泣いたのだろう。
「無事で……無事でほんどうに良かっだ~! 心配しだんだよ! 何であんな事しだのよ! あんな事せずに逃げなさざいよ!」
妻は泣きながら僕を心配していた事と行動に怒った。
それに僕はただただ何も言い訳せずに「ごめん」とだけ、謝り続けた。
その後妻が落ち着くまで、玄関で妻に胸を貸し続けた。
「もう、大丈夫。ありがとう俊平。でも、本当にもうあんな事はしないで……し、知らせを聞いて驚いたんだから!」
妻は思い出したかの様に、誰かに僕が攫われて危ない事をした事を聞いた風に告げて来た。
「ごめん。もうあんな事はしないよ」
そう妻に告げると、妻は笑顔でお腹が空いたと言い部屋の奥へと歩き出すが、僕はその腕を掴み自分の方へと引き寄せた。
そして僕は、妻へと顔を近付けながら口を開けた。
「でもエリナ。1つだけいい機会だから僕……いや、俺からも言わせて」
「へぇ?」
「俺はもし、君に命の危険が迫ったり助けを求めたら、どんな状況だろうがどんな風に思われようが必ず駆けつけて、俺は君を助けるよ。これだけは、忘れないで」
「は、はい」
妻は突然の僕の言葉に驚いたのか、目を丸くしていたが僕は言いたい事を言ったので真剣な顔から笑顔で「それだけ」と言い、掴んだ腕を離してリビングへと歩き出す。
すると後方から何か倒れた音が聞こえ、振り返ると何故か妻が倒れていた。
「エリナ!? おい、大丈夫か? どうしたんだよ?」
妻は何故か両手で顔を覆っており、耳が真っ赤であった。
「も、もう! ……俊平のせい!」
「え!? 僕?」
「いいから」
「いや、でも」
「いいから!」
「わ、分かったよ……」
その後、暫く妻はその状態で何故か悶絶していたが、落ち着くとリビングにやって来て僕の隣に立ち、軽く寄りかかって来た。
それに僕は何も言わずにただ肩を貸したまま、夕飯の仕上げを続けた。
これが僕の妻であり、僕達夫婦の日常である。
たまには今日みたいな、刺激が強い日もあるが、それは本当にまれである。
これからも、僕は妻と一緒に過ごし何気ない日々を共に過ごしていく。
そんな日常が僕は大好きだから、日記に残すのだ。
僕の妻は、悪の組織の大幹部 属-金閣 @syunnkasyuutou
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