2022年1月16日 革新派の御曹司

――千葉県 市川市――


▶都会と田舎が交差する街。ただ、一般的にはイオンがあるので田舎町の市川市で学校の帰路を村上みちむらかみ みちは歩いています。帰り道、江戸時代から残る古い街の一角でドス黒く底の見えないような穴が開いているのが見えます


村上「はー忙しいなー明日はえっとー…………ん?何この穴……」


▶ぼんやりと見ていると、黒い穴から青年が出てきます。青年は手に何かを持っており、それが髪の毛を掴んでいること、そしてよくよく見ると穴の裏側に人間の身体が見えることからヤバイやつなのでは?と感じます。目を逸らそうとした時、青年と目があってしまいます


青年「……あ?」


村上「あ、え……えと……」


青年「……チッ。面倒くせえな」


▶手を後ろに払いのけて推定人間を奥に引き戻し、村上の腕を掴んですごい力でこちらに引き込んできます


村上「あ……あぁ……やめ、やめて!! たすけて!」


青年「黙ってろガキ!とっとと来い!」


村上「────!ぁぅぅ……」


――決戦フィールド――


▶中に連れられると薄暗い場所ですね。円形となった地面のあたりをよく見るとどうやら塔の頂上なのでは?と思いました。鎧を着た西洋騎士がたくさん立っています。倒れている鎧をよくよく見ると、中身は長い金髪の女のようです


青年「そこで立っとけ。動くと死ぬぞ」


村上「ぁ──ぁぃ…………」


▶青年はシャムシールのようなものだけを抜き身で何処からか取り出し、蹴りを混じ入れて鎧ごとぶった切っていきます。あっという間に鎧を全員金属に変えた後、シャムシールを持ったままこちらに向き直ります


青年「おい」


村上「──?! はいっ」


青年「お前、ここで箱のようなものを見たか?」


村上「いえ……何も──何も見てないです」


青年「そうか。なら一緒に探せ」


村上「さ、さがす……? ど、どういう…………」


▶しばらく一緒に探しましたが、とうとう青年の言う箱のようなものは見つかりませんでした


村上「……どんな、箱なんですか?」


青年「知らなくていい。ここもハズレか……大禍時とかいうやつの何がそこまで脅威なんだ」

青年「……チッ。おい!降りるぞ」


村上「え、はい。わかりました……」


▶レディーファーストをするように村上を先に行かせ、螺旋階段を下っていきます。階段の蝋燭が朧朧と灯っていますね。


青年「おい」

青年「名前」


村上「……私は、村上、です。あなたは?」


青年「知る必要はない」

青年「入れ」


▶脇にある部屋に首で指図をしますね


村上「う、はい……」


――決戦フィールド塔:中間の部屋――


▶中にはまるで中世のような部屋に似つかわしくないような、白を基調とした現代的な部屋です。スフィンクスと思われる無駄にでかい絵画が特徴的ですね


青年「探すぞ。手伝え」


村上「す、すご…………はい」


▶村上は冬の結晶があしらわれた箱を見つけます


村上「きれい……。あ、えと……もしかしてこれ、では……?」


青年「は?寄越せ」


村上「……はい、こちらです」


▶分捕るようにひったくると冬の結晶を見て唾を吐き捨て、鍵も無視して剣で無理やりこじ開けます。箱の中身を見て、怪訝そうな顔をしますがみるみる苛つきを隠せない顔立ちに変わっていきますね


青年「…………そうかよ。おい!」


村上「はいっ」


青年「俺を手伝え」


村上「え、ええ……?」


青年「ここに来れるんなら武器くらい出せるだろ。今すぐ出せ」


村上「ぶき……? どこかにあるんです……?」


青年「もう持ってるんだよ。見えてないだけだ」

青年「はやくしろ」


村上「じゃあ……斧、斧がいい……」


▶村上が手斧のようなものを出すのを見ると、シャムシールを手斧と十字になるように掲げます


青年「皇式の契約だ。俺は柊。好きに呼べ」


村上「柊、さん。……わかりました」


柊「こいつはな、大禍時とかいう現代に復活するとかいう化物を倒すべき鍵……らしい。ジジイが死際に探せとか言って来やがったからこっちも無駄に迷惑だ」


村上「おおまがとき……ばけもの……」


▶柊は箱の中身を見せてきますね。見はしますが、なにか鍵のようにしか見えません


村上「鍵、だ……」


柊「大禍時は時間の改竄が出来るから敢えて名称をつけていないんだと。俺が鍵と言ったから今は鍵らしい。くそったれが」

柊「皇と契約したからには皇に来てもらう。親には適当に言っておけ」


村上「! ……家族に、って……」


柊「もう家に帰れると思うなよ。当主様の為の手駒になってもらう。俺とな」


村上「ばけもの、ばけものが復活すると、どうなるんですか……?」


柊「知らん。当主様はなんとかしようとしてるがな。得体のしれない化け物より大事なものがあるはずなんだがな」


村上「――――家に、帰りたい……」


柊「諦めろ。ここに入れる以上どうせ別の場所で怪物の餌だ。皇の敵対勢力の人質にされて親を殺されたいのか?」


村上「それは絶対に嫌」


柊「自分の身は自分で守れ。さとり世代なんだったらそれくらい諦めて現実を受け入れろ」


村上「――わかりました……。私も、ついていきます」


▶柊は村上の腕を掴み、九字を切って祈ると気づけば元の建物の外にいます


――千葉県 市川市――


▶元の場所に戻ってきましたが、気づけば近くにリムジンが停めてありますね


村上「ここは……さっきまでの……」


柊「乗れ」

執事「行成ゆきなり様。愁様のものは見つかりましたか?」

柊「ああ。クソジジイらしいものがあったよ。跳ねっ返りのお嬢様といい解決することはいっぱいある。そこの女は俺の付き人だ。丁重に扱え」


執事「承知しました。ではお嬢様。後ろの席へ」

村上「え、はい……? はい……」

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