2022年1月13日 執行人
――山口県 長門市
▶長門市の山あいの方にある温泉地です。
奥「久しぶりに飲んだなぁ……お酒。まだご飯まで時間もあるしぃ、お風呂頂いちゃおっかな!」
▶温泉に行くまでの途中、ひっそりとした場所に古いアーケードゲームの筐体やパチンコの台が置いてある空間が目に入ります。ですが、ゲームよりネグリジェ姿で壁にもたれかかっている少女の方に目が向きます
少女「ねぇ……。こっち、来ない……?」
奥「せっかく有給とって来たのに、みんなこれなくなっちゃうんだもん……。好きな時間に好きに動けるのもいいものね。――あら?お客さんのお子さんかな?迷子?」
▶どう見繕っても15歳はいっていないだろう少女は、足を組み直してしなだるようにもたれかかり、話しかけてきます
少女「お兄さん……、私と楽しいこと、しない?」
奥「あら~、やだわあなた、そんな格好で!……って言っても私も浴衣一枚だからあんまり変わらないか。――そうねぇ、お風呂は後でもいいし……、どのゲームにする?」
▶奥が近づいてきたのを見ると、少女からふっと表情が消えます。気がつけば、ゲーセンの筐体があった部屋からロボットのようなものの操縦席のような場所に座っています
奥「……あら?私いつの間にこんなところに。……これ、体感型ゲームっていうの?やったことないんだけど、こんなゲーム置いてたの?」
少女「浸透率80%オーバー……!同化……始めます……!」
奥「え?なに?専門用語?私このゲーム初めてなんだってばー!」
▶何処からか少女の声が聞こえたかと思うと、操縦席に座っていた足を足錠のようなもので固定されメインパネルに画面が映り始めます
奥「ひゃあ!なにこれ!本格的な体感型なのね!途中でトイレに行けないじゃないの」
少女「メインシステムOK……心拍安定……動力確保OK……!ジー、ワルキューレ!展開します!」
少女「オペレーターのアルヴィスって言います!今後、あなたの戦線をサポートします!」
奥「なんだかドキドキしてくるわ、あら!しゃべった!かわいいー!えーっと、どのボタンを押せばいいの?」
アルヴィス「これから、執行を始めます!そちらの赤いボタンを押してください!」
奥「赤いボタン……、これかしら!」
▶ワルキューレと呼ばれた機体が動き出し、メインパネルの大画面にシャッターのようなものが映ります。どうやら機体は格納されているようですね
アルヴィス「操作はあなたの脳波を使って行います。日頃動いている感じで動け、と念じれば動いてくれます。浸透率がもう少し高ければニュータイプさながらなことが出来るんですが……」
奥「えー!すごーい!今の科学はそんなこともできるんだね。でも運動神経はよくないほうだから……あんまり期待しないでね……?」
アルヴィス「任務目標は敵対勢力の殲滅です。任務が終わるまで私達は一心同体です!被害の大部分はワルキューレが受けますので、ある程度の損害は無視してもらって構いません!」
奥「ダメージを食らうと振動で伝わってくるタイプのやつかしら、すごいわー」
アルヴィス「問題ありません!では、発進の合図を!」
奥「あ、もしかして音声認識で最初は発進するのかしら!行ってちょうだい!」
▶機械がゴゴゴゴゴと音を立てると、シャッターが開き、空を舞います。空中から落ちている感覚がして非常に不安感がありますね
アルヴィス「ブーストモードに変更してください!背中にパラシュートをつけてるイメージです!」
奥「ひやああーーー!落ちてる!?落ちてるの!?パラシュート?そんなのやったことないわよー!こう……、腰当たりの紐を引っ張るんでしょ!エイッエイッ!」
▶機体が安定して、ホバリングをするようにぷかぷかと上下移動しています
奥「あーこんな感じね!どちらかというとジェットパックのような感じだわ!」
アルヴィス「上出来です!左手に鎌を持っているかと思います。それが武器です!衝撃波だってやろうと思えば飛ばせるので、覚えといてください!11時の方角に1分位前に進んでもらえますか?」
奥「へー遠距離攻撃もできるんだ!えーっと11時方向っていうと、こっちね!キャッ!フワっとは飛ばないんだ!」
▶しばらく進んでいくと、海が見えてきます。今まではずっとXPのような草原だったので青空とのハイライトが映えますね
アルヴィス「そちらのゲートに飛び込んでください!海に見えるものです!飛び込んだら戦闘が始まります!気合入れて頑張りましょう!!」
奥「あら綺麗ねー、えっとアルヴィスちゃん、ここはなんて世界なの?世界観とかも聞いて見たいかも……。――――え!戦闘開始!?おっけーわかったよ!」
アルヴィス「思いの世界……その暗部を断ち切る光の軌跡……ワルキューレ!出動します!」
奥「あらかっこいいわー!頑張ろうね!」
▶海に飛び込んで3秒くらいすると、気づけばビル街のような場所を浮遊しています。ライトセーバーのような光る剣を持った少年と魔法少女のような少女、大量の銃器を持った青年が君達を見た瞬間攻撃を放ってきます
少年「やはり裏切りは許してくれないか……!先制攻撃……!」
魔法少女「夢の力……私達に力を貸して……!」
青年「執行人……噂には聞いていたがお早いご到着だな……」
アルヴィス「敵対勢力3体を確認しました!小さくてもロボットと同等の力を持っています!油断しないでください!」
奥「あら、敵は人型なの?同じようなロボットとかじゃないのね!斬新な世界観だわー!」
奥「いくわよアルヴィスちゃん!先制攻撃よ!」
▶鎌を振り回すだけで四方八方に衝撃波が飛び、ビルが両断されていきます
魔法少女「嘘!?はやい……!きゃぁああああ!!!!!」
青年「怯むな!こいつさえ潰せば紅葉なんて怖くねえ!行くぞ!!」
奥「やったわ!ちょっと心が痛むボイスだけど!」
▶鍔迫り合いを挑んできた少年の剣ごと両断します
奥「いい調子ね!アルヴィスちゃん!このままいくわよ!」
少年「俺の……エクスカリバーが……!」
アルヴィス「加減はいりません!残存勢力を殲滅してください!!」
▶武器を失った少年に向かって鎌を使って退路を塞ぎます
奥「はい!はい!逃がさないわよー!」
少年「うぁ……。俺はいい!お前らは逃げろ!!俺はどうせ助からん」
青年「チッ……執行人ってのは伊達じゃねえな。祈祷が届くラインまで引けば俺らの勝ちだ……」
▶魔法少女が瓦礫を魔法で吹き飛ばし、退路を再び作って後ろのビルを倒してワルキューレに直撃させます
魔法少女「ラブリーブラスト!逃げるよ!!みんな揃って!!!」
奥「キャッ!ごめんねアルヴィスちゃん!」
アルヴィス「あの邪魔な生命を磨り潰すことを優先してください!」
少年「すまん……。俺が足止めする!」
▶少年の身体を鎌を使って空中に浮かせ、そのまま縦に両断します
奥「アルヴィスちゃん結構毒舌なのね~、任せて!」
少年「ぅ……ぁ……」
青年「見るな!!!今はあいつが稼いでくれた時間で逃げ切るのが先だ!!」
魔法少女「う、うん……!」
▶逃げる魔法少女と青年の間にブーストで先回りし、正面から鎌を振り回します
奥「逃がさないわ!はい!」
青年「クソッ……!ミカ!!お前だけでも逃げ切れ!!!出口はもうそこだ!!!」
▶青年の的確に脚部の関節部だけを集中連射して態勢を崩したのを見て、魔法少女がスライディングで抜けていきます
奥「あっ!ごめんなさい!」
青年「エペで培ったエイム舐めんなよ!!!」
アルヴィス「逃してはなりません!多少の損害は無視してでも破壊してください!!!」
▶ワルキューレが立ち上がるフリをして、撃たれるのも気にせず体重で青年を圧し潰します
奥「じゃあえーっと、真空竜巻とみせかけてボディプレース!」
青年「重すぎ……ぐぎぁぅ……ぉ……ぃ……」
奥「ふぅ、こんなものかしら」
▶空間が崩壊していくのを確認して、海を経由して元の草原まで飛びます
アルヴィス「初回にしては上々です!では、追撃は今後の機会にして対価をいただきたいと思います」
アルヴィス「五感と四肢のうちどれがよろしいでしょうか?おすすめとしては味覚です。大抵の人はこちらを選択しますね」
アルヴィス「もしくはこのワルキューレの専属パイロットとして所属して戴く、というのもございますが……」
奥「え?どういうこと?この世界の通貨の概念かしら?――あ!会員登録ね!面白かったししてみようかしら!」
アルヴィス「ありがとうございます!奥大様。では、浸透率を90%まで引き上げ、生体認証を強制的に行います。しばらくお待ちください……!」
奥「すごい!名前まだ言ってなかったのに脳波とかでわかるのかしら!便利ね~!!――けど、ちょっと怖いわ~」
▶操縦席の金属が急に液体化し、足錠が身体を飲み込み始めます。足と操縦席が同化して立ち上がれなくなりますね
アルヴィス「神経回路接続を開始します……!より早い接続を促すのでしばらくお待ちください……」
奥「なにこれ!?鉄?が溶けてるのに熱くはないのね!でもますますお財布取りにいけなくなっちゃう!」
▶腕や腰のあたりまでが金属と同化し、完全に動けなくなったところで、身体の細かい動きをしようとするとワルキューレも動いているのに気づきます。どうやら生体反射が反映されているようです
奥「これってもしかして……VRっていうやつ!?身体を動かすようにしたら動くようになるの!?会員登録してよかったかも!」
アルヴィス「ありがとうございます!今後とも、紅葉執行人『ワルキューレ』の一員として忠実な任務遂行を期待します!本日は電源を落としますので、残りの逃亡ルートを把握したら再起動を行います!本日はありがとうございました!」
▶アルヴィスがそう言った後、ロボットの電源を落とされます。どんどんと眠くなっていきますね
奥「あ!終わりね!お疲れ様でしたー!っとじゃあ、お風呂に……入ろう……眠いわ……」
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