ストーリーも構成も非常に面白い作品

【物語は】
親友の視点から始まっていく。ある者に囚われ、キーワードである黒い水が出てくるものの、まだ事件は謎に包まれたまま。何故彼女は囚われたのか。どうやって囚われたのか。何故彼女だったのか。色んな疑問を残したまま、事件以前の二人の日常へと移っていく。事件から過去へという時間の戻るスタイルは、ミステリーにはとても合ったスタイルであり、一体何が起きるのだろうかという好奇心を刺激する効果を持つ。ここから、主人公視点となり二人の日常風景が明かされていくこととなる。

【物語の魅力】
会話文から始まることには、注視の効果がある。しかもその中で、二人が似たモノ同士であることが明かされており、相手が否定をしないことから、二人がとても仲が良いことも分かって来る。主人公には今まで、心から気を許せる友人がおらず、彼女に出逢ったことを喜んでいたり、その友人を大切にしている様子が伺える。何故二人が友人になれたのか、どうして気が合うのか。主人公の心情が丁寧に描かれているため理由が納得でき、二人の関係が羨ましくも思える。

日常の中では贈り物をモチーフに、素敵なエピソードが盛り込まれており、微笑ましい一面もある。自然な流れで、好意を感じさせたり話の流れがとても巧い。交互に繰り返されていく日常と、親友の現在。その高低差は、日常がか輝かしいほど、親友の現在を絶望が襲い、読者の恐怖感を呼び覚まし、ゾッとさせる。書き方、構成が巧いと感じた。この手法は、読み手によって感じ方が違うかも知れない。

【登場人物と事件の在り方】
はじめは似た者同士で、とても仲の良かった二人。ある日を境にその関係は少しづつ変化していく。しかし読者は冒頭で親友の想いに触れているため、根底は変わらないのではないかと思うに違いない。つまり、何か理由があるのではないかと疑ってしまうのだ。変わらない自分と、変わってしまった親友に寂しい気持ちを持ちながらも、それについて何も言わない主人公。事件は、二人の絆を試しているのかも知れない。主人公の洞察力の良さについても、裏付けのとれるエピソードが書かれている。

この物語に出てくる登場人物は多くはなく、主人公と親友にスポットがしっかりと当たっているように感じる。そして、ミステリーとしてとても面白い。犯人探しというよりは、事件の全容を知りたい気持ちの方が勝る物語だ。

【物語の見どころ】
事件現場と、過去から現在という二場面が交互に描かれている為、非常に感情が揺さぶられる。恐怖と平穏はいつしか恐怖と不安へと移り変わり、気づけばすっかり作品の虜となって読む手が止まらなくなる。この二場面制は非常に面白く、事件現場では事件が進んでおり、過去から現在へ向かう主人公サイドでは、段々と事件についての内容などが分かっていく。その事により、早く続きが読みたいという読者の好奇心を刺激するのだ。
とても構成の面白い作品だと感じた。

ミステリーの好きな方に特にお奨めしたい作品です。
是非あなたもお手に取られてみませんか?

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