10/10:−27等星の光明
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結果:被験者はアンドロイド
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だがその悲しみは、自身の存在を覆されたものとしては微かなものだ。
「子供の頃考えたことがあるの。自分は自分を人だと思い込むように設計されたアンドロイドなんじゃないかって。すっきりしたわ」
「あんた、変わってるな」
「知らないままじゃいられない
「夢にも思ったことないな」
ネオンは相変わらずワイシャツを照らしている。
「あなた、ネオンは不平等だと思わない」
「それ以外知らない」
「閉ざされた地下に生まれ育った私たちは、この暗闇以外なにも知らない。太陽の眩しさも、ぬくもりも、色も」
ネオンの青色がシワだらけの白いワイシャツを染めている。それを見て、どこかで見た「青空」という言葉を思い出した。
「太陽は万人を平等に照らす。一度でいいからそんな太陽を浴びてみたい、知らないまま死にたくないの」
「それがお前の逃げる理由か」
彼女はしおらしく頷く。
「ここは地上へ、そして空へ通じる通路のひとつ、丸の内摩天楼。この階段の先に太陽があるの……」
「地上に出れば放射線で死ぬぞ」
「バイオロイドの遺伝子は耐放射線能力が高まるように編集済みよ」
アンドロイドも悪くないわね、と言って自嘲気味に笑った。そうしておきながら、手を取り立たせたことに驚いたのは彼女のほうだった。
「マイナス27等星、ですって」
訊き返すと、
「太陽の明るさよ」
「とうせい、なんて初めて聞いたな」
「それも私が明らかにしてみせるわ」
「太陽、拝めるといいな」
「ええ」
ありがとう。
そう言う彼女の声に被って響いたのは、一発の銃声だった。頭は三日月のように欠け、倒れこむと同時に中身が床にこぼれる。
「大丈夫ですか」
「ああ。報告書は任せる」
「わかりました」
「はやく行け」
茫然自失だが口は不思議と動いた。後輩は勇んで階段を下りていった。
後輩の足音よりも大きく、盲目に信じていた世界の
アンドロイドと判定された彼女の亡骸を見下ろすが、半分が吹き飛び脳漿がこぼれる顔からはもうどんな感情も感じることはできない。
思い知らされる。テスタを妄信する盲目さを、どうしてこれを思いつかなかったんだろうかという自分の愚かさを。
テスタを自分の目の前に持ってきてスキャンを始める。結果はすぐに出た。
「太陽、か」
俺の顔は今、悲しみを浮かべているのだろうか。
マイナス27等星の光明 木戸相洛 @4emotions4989
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