第5話 思いと想い

そこには黒田に銃を突きつけている西宮が

居た


「ちょちょ何やってんだよ!」

「何って見て分からねぇか?今から黒田を

殺すんだよ!」

「はあ?お前ら柔道で仲良くやってたじゃねぇか!」

「だからだよ!だからこいつを殺すんだ!」

「一回落ち着けって!」

「ああ、落ち着いてるさ、それも十分に…

なあお前ら一人くらい恨んでいる奴居るだろ…一人くらいそれが俺の場合こいつだった!それだけだ!こいつはこいつはぁ!俺の全てだった、柔道を…柔道を…俺は小さい頃から

全国を夢に見て小さい頃からずっと…ずうっと練習してたんだ…大会で優勝すれば親から褒められたそしてこの努力を出すためにこの3年間全て柔道に捧げた…捧げたのに…

お前は去年の1月に転校してきたよなぁ!」

「ああ」

「こいつは転校の前は柔道なんてやっていなかったこいつが…たったの1年で俺の全てだった柔道を全て抜かしたんだよ!分かるか…

柔道を始めて12年間俺は夢に見た全国を

こいつはたった1年で抜かしてきた…練習が

多かった?全然違う、こいつは家の用事と

言って全然部活に顔を出さなかったそんな奴が必死にやった努力を一つの才能に全てを消されたんだよぉ!!!」

「だからって殺すなんて!」

「いいよなぁお前みたいな呑気なことずっと行ってる奴は…お前今にもなって気づかないのか?タイムパラドックスに…」

「タイムパラドックス?」

「タイムパラドックスっていうのは未来から過去に戻るときに起こる問題だよ…俺が今からここに居るやつら全員殺して元居た時間に戻るとしたらここに居た奴ら全員もともと居なかった事になるんだよ!!!だから俺がお前を殺したら全国行った事になりこの夏に俺は大会に出れるんだ!だから死ね黒田あああああああああああ!」

「させるものか」

その瞬間

西宮が消えた

「な、何をしたんだ…田島!」

「簡単なことだよ…あれさ」

田島がクイッと指をさした先にあったのは

「投票アイアンメイデン?!」

「ああ、君と西宮と黒田が話している間に皆に投票してもらった…」

「そうか…」

その瞬間ドンッと大きな音が鳴った

「おい…お前!俺に惚れてたんじゃねぇのかよ!!!お前もあれか!黒田の才能に惚れたのか!お前はいつもいつもいつもいっっっっっつも人の物を!奪うんだよ!出せっ!ここから!今すぐに!!」

「黙りなさい」

彼女は冷酷な目をして二宮の方を見た

「私が黒田君のことを惚れる?そんな訳ないじゃない…私はあなたの…西宮君の笑顔が

好きだった、何より大会で優勝して私の方を見てニコッて笑うあの顔が好きだった…」

「だったらなんで俺を殺すような事を!」

「私は、私は…その優勝した時の笑顔より

西宮君の努力する姿が好きだった!君の相手を見つめる目が、優勝を夢見て頑張るその

努力が!何よりも!好きだった!」

「田島…」

「なのに君はその努力を自ら踏みにじった

私は彼を殺そうと事よりもその事に失望してしまった…黒田君には済まないが私にはまだ君が好きなのかもしれないな…」

彼女は涙を流していた、とても悲しそうに

どれだけ彼の事が好きだったのだろうか

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

私には夢がない

大手の企業に勤めて普通より上のお金を

稼ぎ老後に貯蓄をする。

これを夢とは言わない、そんな事は分かって

いた。

だからこそ西宮君が12年間夢を見て練習しているのを聞き大変妬ましく思った

私は未来の為に勉強をしているのに!

今後のことを考えないなんて!

でも私は正直羨ましかった

夢を追い続ける彼の事が

その事を聞いてから彼の事が離れなくなってしまった。

ついつい部活に顔を出すと彼が居た

クラスで馬鹿している彼とは全く違う

なんて…

なんて綺麗な目なんだろう

前しか見ていない目

私のような人生の中での小さな壁を怖がる目

とは正反対の目をしていた。

その目を見ると想ってしまう

隣で彼の行く末を見れたなら

その日から私は時間があるたびに彼の練習を

見に行っていた。

そして私は中学3年生に上がるときに彼に告げた

君が好きだと

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「西宮君、こんな君は見たくなかった」

西宮は何も言えず下を向いていた

先ほどの怒りの面影はなくいつもの彼に

戻っていた。

「さよなら、悠太君」

そう告げると猶予の3分が切れアイアンメイデンの蓋は閉まる。

アイアンメイデンが閉じる時彼は泣いていた

殺せなかった後悔なのか、死んでしまう恐怖なのか、はたまた


彼女の想いに気づけない不甲斐無さなのか


後ろで見ていたピエロはこう呟いた


「月桂樹の花は咲く」と


月桂樹の花は咲く第1章 完


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月桂樹の花は咲く ローレン @loren19ss

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