スナイパーライフルとすずめ
2020年12月18日掲載
へい! バグラチオン!(挨拶)
今週は寒いですね。ロシア方面から寒気がやってきました。冬将軍閣下の本陣でしょうか。
まさにソ連のバグラチオン作戦のごとく、あっという間に日本列島をキンキンに冷やしてしまいましたね。
今朝ニュースを見ておりましたら、関越道で大雪のために大勢の人と沢山の車が立ち往生。
今朝の時点で20時間以上も車の中に閉じ込められていたなんて報道がされていまして、改めて冬将軍閣下の恐ろしさを実感いたしました。
思えばですよ、冬将軍と言えば必ず想起されるのが第二次世界大戦ですね(?)
まずソ連がフィンランドに攻め込んだ1939年の冬戦争。
ロシアは冬がめちゃくちゃ厳しい国ですから、さぞや冬の戦いに慣れてらっしゃると思いきや、あれよあれよと寒さで凍え死んでしまうソ連兵が続出。
冬将軍以前に行われたスターリンの大粛正によって軍隊が弱体化していたり、兵士が比較的温暖な気候の地域出身者が多かったとか、色々な要因はあるのですが、やはり決めては記録的な寒波。
そう冬将軍閣下です。
歴史的に見て、冬将軍を味方に付けた方が戦いに勝つもので、この時の冬戦争においてはフィンランドが冬将軍の寵愛を得たのでしょう。(白い悪魔とかイカれスキー師団は割愛)
逆に冬戦争の高くついた授業料で学んだソ連軍は1941年から始まる独ソ戦において、序盤は劣勢だったものの、圧倒的な物量(人が畑で云々)と冬将軍に愛される準備をしっかりしていた(厚着とかかしら?)為に、今度はソ連が冬将軍を味方にして、ザワークラウト共を追い出したのでした。
屋台骨の腐った扉を蹴破れば崩れるなんてのは幻想ね! ビバ、バグラチオン!(東京都北区の方言でバグラチオンという意味)
さて表題ですが、戦争中にもおっかない冬将軍ですが、この平時の日本でもおっかないことこの上ない。
私は今日本海側の豪雪地帯に住んでいるのですが、見事に冬将軍閣下の進撃であたり一面焼け野原ならぬ雪野原でございます。
雪ばっかで仕事もやる気がなくなりますが、それでも仕事はあるのです。(辛い)
この時期は人間も雪で苦労しますが、どうやらそれは動物も同じなようで。
私は職場の倉庫で一人機械いじりをしていたのですが、倉庫の扉を半開きにしていましたら寒さを逃れるためでしょうか、次々とスズメが中に入ってきまして、しめておよそ30匹の侵入を許してしまいました。
ところでスズメって可愛いですよね。地味なカラーしかないのにあの可愛らしさ。ちゅんちゅんと鳴くのもポイント高い。ほんと好き。
でもそれはせいぜい2、3匹の話。それが30匹もいりゃあただの群れ。
沢山のスズメがちゅんちゅん喚きながら倉庫の天井を飛び回っている訳なのです。正直目障りだし、うるさい。
私はなんとかこの迷惑な団体客を追い出せないものかと色々試みました。窓から出て行くように追いかけ回したり、YouTubeでスズメの鳴き声を再生して誘き出したり。
スズメ群が侵入し、追い出しが始まったのが火曜日で、それから水曜日木曜日と、あの手この手で何匹も倉庫から追放し、ようやく残り一匹になりました。
しかし問題はその最後の一匹。奴がしぶとい。馬鹿な同胞たちが私の罠で何匹も外へ追放されて行く中、奴だけがありとあらゆる罠を掻い潜って倉庫に居座るのです。まるで倉庫の支配者のごとく!
そりゃあスズメさんだって大雪の中じゃ大変でしょう。生きる為に必死だと思います。
しかしこっちも倉庫中をフンだらけにされては仕事に差し支える。
そりゃあね、正直こっちもやりたくない仕事とスズメさんだったらスズメさんの好きにさせてあげたいですよ。でもこっちも生活かかっていますから。
あまりにも賢いスズメに業を煮やした賢くない私は、ついに、いよいよ最終手段に出ることにします。
そうです。スナイパーライフル(笑)です。
自宅にあるサバゲー用のライフルを車に積み込んで今日は出勤しました。ドン引きする同僚を尻目に気分はシモ・ヘイヘ。
分かってます。分かってるんです。
許可なく鳥獣を殺すのは犯罪だと。
私だって無闇に殺したくはありません。
でも警告を聞かない奴が悪いんだ……(錯乱)
始業時間が過ぎ、いよいよ私は決闘に臨みます。
ライフルを構えて倉庫に突入し、隈なく奴を捜索。映画の見様見真似で倉庫の影を一つずつクリアリング。
いた、あそこだ!
ふと視線を見上げると、天井の鉄鋼から私を見渡しほくそ笑むスズメの姿(被害妄想)。
まるでやれるもんならやってみろよの威風堂々たる佇まい。
挑発を受けた私はライフルを構えてスコープでスズメに狙いをつけます。その綺麗な顔を吹き飛ばしてやるぜ!
スコープの十字線の真ん中に奴を捉えて、セーフティを解除。後は引き金に指を添えて引くだけ。
しかし次の瞬間、奴がスコープから消えます。しまった! 動きの早い奴め! どこに消えた!
銃を構えながら索敵を再開すると、目の前に一瞬影が。
気がつくと、私の足元に奴がいました。そして夢中で床の何かを啄んでいる。
私の足元には、昨日私が仕掛けた罠に使ったお米の粒が。
そう、奴は私を挑発していたのではなく足元の餌をただ食べたかっただけなのです。
戦意が削がれた私は銃を下ろし、夢中で餌を食べるスズメを眺めます。
奴もただ、この冬将軍寒波の中で必死に生き延びようとしているだけなんだと。
私は決めました。仲間は追い出してしまったけれど、奴だけはここにいさせてやろうと。
また明日、餌を持ってきてやろうと。
結局は、同じ冬将軍の攻勢に苦しめられている同士だったのです。
スズメさん。撃とうとしてごめんね。
一緒に冬を過ごそうね。
なんて優しい気持ちにさせられた一週間の激闘でございました。
奴はそのあとあっさりと、私が入ってきた出口から外へ消えましたが。
さて、冬将軍と言えばロシア。ロシアといえば現在連載中、「枯女が異世界転生したら(略)」はいかがでしょうか。(当時)
この物語はですね、疲れ果てたOLがロシア・ロマノフ王朝的な国の皇女として異世界転生してしまうお話です。
きっと悪役令嬢的なキラキラ王子様の愉快なラブストーリーなんじゃないですかね? 知らないけど。
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