バチンッ! バチバチンッ! バチンッ!

2021年1月28日掲載


今朝のことでございますがね、私は録画しておいたお正月のお笑い番組を消化の意味合いを兼ねて視聴しておりました。


最近は純粋なネタ番組というものが、一時に比べてだいぶ減ってしまいまして、劇場ではなくテレビで芸人さんの漫才やコントをしっかりと楽しめる機会というのも少なくなってしまいましたので、お正月のお笑い特番というものはなんとありがたいことか。


私が今朝見ていた番組は、お笑い名人寄席2021というテレビ東京で毎年お正月に放送されている番組でございまして、実際に普段は寄席として使われている劇場で、名だたる芸人さん達が芸を披露しておりました。


ナイツにサンドイッチマンなど有名で面白い方々がご出演される中、私が一人とても気になり、今日の記事にしようと思った方がございます。



その名も神田伯山。



以前は神田松之丞というお名前でしたが、去年2020年に大名跡である神田伯山を襲名されたことは、皆さまの記憶にも新しいかと存じます。


さて、この方。近年ではあまりテレビで講談師の方をお見かけしない中、寝ぼけた酔っ払いのようなお顔をしながらその奥にギラリと光る鋭い眼光と、歯に絹着せぬ舌鋒の鋭さを併せ持ち、何より講談師としてのキモである講談が実に上手く面白い!


今や飛ぶ鳥を落とす勢いで頻繁にメディア露出をされている、一番有名な講談師の先生ではないでしょうか。


私は以前偶然立ち寄った浅草演芸ホールでこの方の講談を聞く機会を得まして、あまりの話のうまさに感動し、それ以来大ファンでございます。


ただまぁ私が好きなのはあくまでこの方の講談の上手さでございまして、この方の根本といえる性根までが好きかと言うと……分かるでしょ?(笑)


別に嫌いという訳でも無いのですが、この方のラジオを聞いているとまぁお口が悪いこと悪いこと!


どうにも伊集院光さんのラジオの熱心なリスナーさんだったようで、その伊集院光的な悪口ラジオの系譜、それも本流にいらっしゃる感じ(笑)


いやぁ私もね、だいぶ口が悪いし人の悪口平気で言うし、なんだったらこのコラムの大半は悪口で構成されておりますからね、人のことをとやとや言う資格はないんですよ。


ただね、ここで大事なのは。


口の悪さに芸の良し悪しは関係ないっちゅーことですよ。


確かに伯山先生はだいぶお口が悪い。人相も悪い!

でも普段悪口を吐いている口と同じとは思えないくらい、伯山先生の講談は素晴らしいのです。


そのギャップすらも含めて私は好きなのです。



と、何故か今日に至り枕のうちにオチがついておりますが、本日の表題。

これが何かと言いますと、ハリセンでございます。


よくテレビや漫画に出てくるような、人の頭を叩くための下品な小道具のことではなく、講談師の方がお使いになる、音を鳴らすための扇でございます。


講談をお聞きになられたことがある方ならお分かりになると存じますが、講談師の先生がお話になる際に両手に扇子を持たれているのをご存知でしょうか。


両手に扇子なんかもっちゃって、この人は余程の暑がりさんなんだなぁと想像される方もござりましょうが、いやいやそうじゃありません。


片手にあるのは確かに普通の扇子でございます。落語の噺家さんがお持ちになられているものと同じものでございます。


けれどももう片方の手にあるものは、決して開いたり、蕎麦を啜る真似をするためには使いません。


このもう一つの扇子は張扇といいまして、ええそうですともハリセンでございます。


これが何かっちゅう話ですが、講談師の先生方はこの張扇を使って座に置かれた机を叩くのです。


何もノリの悪いお客さんに憤慨し、イライラして机を引っ叩いている訳じゃあございません。


落語はお話の中の役になりきって演じるものでございますから、役者と同じく間が大事なのでございます。


上手に間を生かしてお客さんを話に引き込むのが落語でございますが、講談はといいますと名前の通りお話を語って聞かせる芸でございます。


ビシバシっと、机を叩き音を響かせ調子を作り、リズムよく小気味良い講談口調でお客さんを引きつける。それが講談というものでございまして。


中には張扇をお使いにならない先生もいらっしゃいますが、それでもやはりバシっと響く扇子の音こそ、講談の醍醐味なんだと私は思います。


ところで日本語には「一席をぶつ」という言葉があるじゃないですか。


ぶつというのは語るとか演説するという意味でございますが、ぶつというのは打つと書きます。


まさしく講談も机を打って魅せる話芸でございますから、講談師の先生方は我々客に一席打ってくださっている訳でございます。


ああ、なんと格好良く勇ましいことか。


私も張扇片手に何か一席打ってみたいものですが、私が話せることとなるとそれは悪口か猥談ばかり。


いずれは猥談師として世に羽ばたいてみたいものですなぁ。




さて、講談といえば現在連載中(当時)

枯女が異世界転生したら(略)

はいかがでしょうか。

取り立てて講談とは関係ありませんが、小説の宣伝のための記事ですので致し方なく(笑)

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