話数やシリーズを重ねると奇抜だった人物が無難な性格に変わっていく現象

 何だかんだで“VRMMO制度の世界を淡々と生きる男”シリーズも三作を書き終える事が出来ました。

 そんな中、一作目のヒャッハースローライフを何となしに読み返していて感じた事です。

 主人公を除いて、一作目と三作目に登場した仲間は二人。

 方や、一作目では主人公を瞬時に移動デスルーラさせる為に殺害すると言う暴挙を(依頼された上とは言え)さらりとやってのけたパワードスーツ女。

 方や、一作目では自作の薬物をキメると戦闘力と引き換えにIQがガタ落ちして言動が残念な事になる元医師。

 それぞれ、VRとは言え世紀末ポストアポカリプス世界で逞しく順応できそうなイカれ具合なのですが、三作目のラヴクラフトリゾートを書き終えてみると、それぞれキャラが随分丸くなったなと思いました。

 前者のパワードスーツ女は、二作目“若手とシニアと~”(若シニ)での仲間との出来事やら何やらを引きずってあれやこれやと悩む乙女心を見せ、年下の仲間に対する包容力も見せ。

 後者の医師は(前述のような薬物が存在しないゲームの世界観もあり)皮肉っぽく飄々とした、比較的真っ当なお兄さんキャラに落ち着きました。

 ちょうど、お笑いコンビのボケをしていた人が、綺麗にツッコミへと転向したような感じになりました。(※1)

 物語が主人公の猟奇殺人から始まる邪聖剣チェーンソーでも、終盤や外伝の終わり頃には幾らか丸くなった感はありました。(最後まで罪悪感皆無の人殺しのままではありましたが)

 

 何故だろうと考えて、まずはじめに、作品が長引けば長引く程、(この場合は変な表現ですが)“洗練”され、人物も理にかなった無難な性格に変化していくのだろうか、と何となく考えました。

 

 次に、VRMMOを~シリーズについては、パーティ内の年齢構成も影響したのだろうとは思います。

 一作目のヒャッハーではパーティの年齢も横並びだったのに対し、三作目のラヴクラフトリゾートでは、高校生にもならない年齢の仲間が話の主軸となっています。

 仲間の年齢が横並びなのか、年下が混ざっているのかの違いは、個々の表現に影響するのは確かでしょう。

 この創作論の、

https://kakuyomu.jp/works/16816452218321983797/episodes/16817330653574264068

 で一度ご紹介した、二作目の若シニに登場した仲間のお姉さんも、目に見えてこの傾向が見えました。

 二作目のパーティ構成は、ラヴクラフトリゾートとは逆に50代のシニアプレイヤーが話の主軸となっており、主人公含め、彼女よりも歳上の(イメージの)仲間が過半数を占めており、どちらかと言えば後輩キャラになっていたかと思われます。

 リンク先のトピックにある通り、過去作の主役をリファインした、と言う複雑かつ超個人的な背景から生まれた人物でもあるのですが、

 ほぼ同じ性格で描写的にも同じ描き方をしたにも関わらず、パーティ最年長だった過去作とパーティ最年少だった若シニでは別人のようになっていた、と言う結果になりました。

 そこから更に、実年齢・精神年齢ともに仲間の平均年齢が下がったラヴクラフトリゾートでは、再び年長者ポジションに収まった事で、また、相対的な年齢と印象の相関が裏付けられたように思えました。

 依然、彼女よりも主人公の方が歳上(風)なのですが、相対的に彼女が“二番目の年長者”になっただけで、随分と印象が違ったものです。

 以前もこちら

https://kakuyomu.jp/works/16816452218321983797/episodes/16817330653859764812

 でお伝えしたように、このシリーズでは今のところ必ず4人の仲間と徒党を組み、最終的に“二人以上”の仲間と別れると言う暗黙のルールで書いております。

 一度別れた仲間と再度組むケースも多い(予定)なので、今回のような同じ人物が全く別人のように見える機会が多く巡ってくるやも知れません。

 

 ただ、人物が人間関係や環境による順当な変化であれば、引き換えに奇抜さが失われてもまだ仕方がないのですが、話数を重ねるにつれて初志を忘れて、無意識のうちに無難な方向に収束させてしまわないようには気を付けたい所でもあります。


(※1)

 一作目のパーティ中で一番イカれていた彼を、三作目で比較的真人間枠にしたのは、色々と意図的なものもあります。

 理由のひとつとして、薬物をキメて暴れるキャラは、一作目でやり尽くした感もあったので、その上で同じ人物を別路線で描けないかと言う試みもありました。

 これは二作目で“本来誰も使えない秘術の使い手”であるお姉さんも同様。

 ユニークスキル持ちの活躍をやり尽くした後、更にそれを上回る活躍を別ゲームでさせるとどうなるのか? と言う試みでした。

 自画自賛かも知れませんが、どちらも概ね成功に終わったと思っています。

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