AIに自作品の番外編・スピンオフを書かせる試み

 近況ノートで悪戦苦闘の様子はお送りしてきましたが、ようやくサイコブラックと言えそうな作品が書けました。

 無血のヒーロー サイコブラック「ストーカーの恐怖! 狙われたサイコブラック!?」

https://kakuyomu.jp/works/16817330656457249269/episodes/16817330656855247613

 

 とにもかくにも、課題の大半が「chatGPTは古い対話をすぐに忘れる」事と「一度変な癖が付くと、そのセッションではまず治らない」事との戦いでした。(※1)

 そうなると、当然ですが忘れられる前提で対話を行う必要があります。

 具体的に取ったプロセスは以下の通りです。

 

・序盤の対話でサイコブラックの設定(殺傷禁止、悪人を倒す手口など現状8項目)を一気に挙げる

・“意外性”のパラメータを定義する

・プロットの候補を5パターン出してもらう

・気に入ったプロットで小説(実質、あらすじ)を書いてもらう

・掘り下げたいシーンを、プロンプトで“意外性”のレベルを指定しつつ掘り下げてもらう

・初期の指示を忘れられたと思ったら「対話を終了します」とAIに告げてセッションを終わらせる(※2)

・再度、サイコブラックの設定を教え直し、“意外性”のパラメータを定義し直す

・前回のセッションで貰った話を今回のAIに渡して継承する

 

 この作業を繰り返していると嫌でも気付かされるのですが、一語一句同じ指示を出しても、セッション毎にAIの性格が変わってしまっている事です。(※3)

 これについては、あくまでも私の体感である事を先に断っておきますが、

 セッションの終わらせ方は、上で述べたように「対話を終了します」と宣言する方法と、システムから対話の履歴を消去する方法があります。

 私の見た所では、履歴を消さないやり方であれば、そのままの性格が次のセッションにも引き継がれている印象です。

 逆に、履歴から消してしまうと、性格もリセットされている事が多く感じられました。

 

 このAIの忘れっぽさについては、デメリットばかりでもありません。

 特にこのサイコブラックというのは、自分の陰湿な手口を素で棚上げして、悪人の所業に対して正義感を燃やし、自分が破滅させた相手に同情すると言う特性があります。

 特に今回、AIの提案してきたプロットが「ストーカーに狙われたサイコブラックが、反撃する」と言うものでしたが、ストーカーに怯えるサイコブラックと言う前半と、悪質なストーキング行為でそのストーカーを追い詰めるサイコブラックと言う構図がうまいこと「サイコブラックらしさ」を出してくれたと思います。

 AIの忘れっぽさが、結果的にサイコブラックの天然棚上げ根性を表現してくれたと言う事です。

 勿論、これはサイコブラックと言う極めて特殊な前提を持つ作品である事と偶々噛み合ったに過ぎないと思っています。

 そもそも「人間は(シナリオ面では)手出ししない」と言う、この実験自体が一般的な使い方では無いのだろうとは思いますが……こうした“偶然”を拾うのも、あるいはAI執筆のやり方なのかも知れません。

 前回の「ネットいじめを成敗」の話で言えば、サイコブラックが「あなた方は人を傷つけている!」と糾弾するシーンは一見して面白味の無い一般論ですが……サイコブラックの性格を知っていると、暗に別の意味を帯びてきます。

 今回、AIの出力では「サイコブラックとストーカーだった人物は和解した」と出ましたが、ここで“和解”と強調すると、意味合いがガラリと変わった筈です。


 理想を言えば、こうした偶然に頼らずコンスタントにサイコブラックを書けるくらいにはなりたい所ですが……まだまだのようです。 

 

(※1)

 さらに言えば、AIの記憶容量は“トークン”と言う単位で計測されるのですが、日本語一文字とアルファベット一文字では、前者の方がトークンの消費が重いそうです。

 日本語の、それも小説と言う極めて長文を一貫性を持って書くにはやはり不利な仕様になっています。

 所々でプロンプト(指示)を英語で書いたり、今回のパラメータを“意外性”のみに絞ったのも、このトークンを節約する為です。


(※2)

 忘れられたと判断する材料としては、サイコブラック(主人公)の性別が変わっていたり、サイコブラックが個人ではなく“組織名”にされたり、最初に提示したルールを破って暴力で解決したり……。

 また、やたら「意外性のある」と言う表現を連発し出したら、そのセッションの潮時かと思われます。

 “意外性”と言うのがパラメータである事を忘れてしまっているので「“意外性”と言う語を文に沢山入れろ」と誤認していると言う事です。

 本来の用途通り、文章の意外性を操作する目的もありますが「忘れられたかどうかセンサー」の意味合いもあります。


(※3)

 例えば本文の執筆に入る前に「他に条件はありますか?」と念入りに質問してくる場合もあれば、提示した指示をいくつか無視した内容や、“意外性”パラメータの意味を最初から理解しないままに勝手に書き始める場合もありました。

 正直な所、真面目で有能なパターンのAIを引き当てられるかどうかは運に左右されます。

 

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