AIに「それなりの短編」を書いて貰う試み・まとめ

 取り敢えず、タイトル通り「それなりの短編」をコンスタントに書く所には到達、かつ、サイコブラックや毒食グルメのスピンオフと言う壁にぶち当たった今がひとまずの区切りかと思い、一旦まとめます。

(※1)

 

 大前提として、(少なくとも私が使っているchatGPTに関しては)AIの1セッションにおける記憶容量には限度があり、古い対話はどんどん忘れ去れていく、という仕様を念頭に入れて下さい。

 だからと言って結論を急ぐあまり、一文に詰め込みすぎると、後述する理由からこんがらがってしまうのですが。

 

●短編を書いて貰う、おおまかな手順

 まず「◯◯のテーマで小説のプロットを5パターン提案してください」と依頼します。

 するとAIはその通りに5パターン提示してくれるので、気に入ったものがあれば、

「◯番目のプロットで小説を書いて下さい」

 と依頼。

 どれも気に入らなければ、

「もう5パターン下さい」

 とお願いするたび、6番目以降のアイディアをくれます。

 ここで手間取ると、最初の依頼を忘れられてしまうかも知れないので、良い候補を貰えない場合は最初から仕切り直して、聞き方を変えるのも一つです。

 

「◯番目のプロットで小説を書いてください」

 と依頼すると、大抵、小説と言うよりは粗筋のような文章を返して来ます。

 これに対し、掘り下げてほしい部分をコピペして、

「以下の文を、詳細に描写してください。

(コピペした原文)」

 と依頼します。

 ここで「詳細に美しく」だとか「詳細に、ユーモラスな文体で」と、細かい注文をつける事も出来ます。

 今回の作品の一つ“Radiation Uprising”(核戦争後のポストアポカリプスもの)が、これによってコミカルな文体に仕上がりました。


 ここまでの手順を例文にしてみます。

「現代中国を舞台とした武侠小説のプロットを5パターン提示してください」

【1.麻薬組織の秘密を知ってしまった主人公が追われ、やがて反撃する(以下略)

 2.政府の闇に立ち向かう拳法家の若者たち(以下略)

 3.没落した名家の娘が復活を目指す(以下略)

 4.サイボーグ拳法家と気功術拳法家との抗争(以下略)

 5.要人のボディーガードとして雇われた少林寺僧の窮地と逆転劇(以下略)】

(※この出力結果はフィクションです)

「3番目のプロットで小説を書いてください」

【主人公は北京にある名家の娘だったが、父親が莫大な借金を残して急逝してしまった。

 苦しくなった生活の中、主人公は武術の師匠に才能を見出だされて師事することとなった。

 強くなった主人公は、やがてその力で悪と戦い、打ち倒してゆく。

 その功績によって、彼女は見事に家を復興した】

「以下の文を詳細に描写してください。

 父親が莫大な借金を残して急逝してしまった」

【主人公の父親は北京でも大手の実業家だったが、悪の勢力に荷担しなかった為に敵視され、商売を奪われてしまった(以下略)】

「以下の文を詳細に描写してください。主人公の習った流派は二刀流剣術にして、そのメソッドを現実に忠実に描写してください」

【主人公が師事した人物は、二刀流剣術の達人だった。

 二刀流は両手に剣を持つ為に、特に腕と背中の筋肉を鍛えなければならず、体力的に過酷なトレーニングが続きました(以下略)】

 ……と、基本的にはこうして、シーンごとに掘り下げていく繰り返しです。


●割りと知ったかぶりをするAI

 時折、自信満々に間違った答えを返してくる事があります。

 知ったかぶりと言っても、勿論、見栄やプライドからではなく「手持ちの知識で何らかの答えを出力しなければならない」ゆえの現象かなと思います。

 わからない事を、持っている情報を無理矢理組み合わせて導きだそうとする挙動は、我々人間にも度々見られるものです。

「ヒテッマンリスペクトを知っていますか」

【はい。ヒテッマンとはポケモンに登場する技の一種であり、主人公がそれに感銘を受けた所から物語が始まります】

「ヒテッマンリスペクトとは、チートバグ動画の事です」

【失礼しました。チートバグとは、バグを利用した不正なプレイの事であり、ポケモンに登場する技・ヒテッマンを不正に取得する行為です】

 ……と言う風に、対話に変な“癖”がつくと修正困難になるので、一度、仕切り直した方が無難です。

 私の経験上、無理に理解させようとすると余計にこんがらがるばかりでした。

 恐らく、AIの記憶容量が少ないのは、こうした事態を防ぐ為もあるのかも知れません。

 

 あとは、知ったかぶりとは少しずれますが、なにかと「仲間と協力して」解決させたがるなど、一定の癖があるように感じられました。

 

●既存の作品の続きやスピンオフを書くのには向いていない

 自作品のスピンオフを書こうとした所で壁にぶち当たったと言う、私の現状は冒頭で紹介した通りです。

 これには「既存の作品は、既にその作品の型にはまっている」「こうでなければならない、と言う正解不正解が定まってしまっている」事にあると推測します。

 例えば私のサイコブラックの例で言えば、

「黒いヒーロースーツの変身ヒーローでなければならない」

「その正体は二十代の男性・白井真吾でなければならない」

「サイコブラックは真心から(敵も含めた)みんなの幸せや平和の為のつもりだが、手段が陰湿な嫌がらせや迷惑行為になってしまい、そこに彼の認識と世間との

 等々、等々。

 また「変身ヒーロー(および作品自体)が暴力や殺傷行為を一切禁じられており、社会的に罠にかけたり、精神的なリンチで悪を裁く必要がある」

 と言うのも、AIからすれば、ややこしい話かと思われます。

 

 先の中国武侠小説や、世紀末ブラックコメディなど、自分(人間)がカバーしきれない広範囲の知識を瞬時に用意、ある程度組み合わせて多彩な物語を書くのには、AIは向いているようです。

 一方、サイコブラックのように脈絡のない要素を組み合わせるのは不得意であるようです。

 実際、三題噺で「サメ」「レゴブロック」「魔法少女」を注文すると、かなり支離滅裂な内容になりました。

 

 勿論、これを打破するもっとうまい注文の仕方はあるかも知れませんし、研究はこれからも続けていく所存です。 


(※1)

 なお、今回の試みはあくまでも「AIにのみ書いて貰い、手出ししない」と言うルールでやっております。

 人間も協力すれば、「それなり以上」の作品も充分に可能だと思います。

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