二人と旅立ち、二人と別れる

 タイトルだけでは何の事かさっぱりだとは思われますが、またまたVRMMO制度を淡々と生きる男シリーズの話題です。

 このシリーズでは、主人公は必ず四人の仲間と行動を共にする事となっています。

 そして、各ゲームでの物語の最後に「二人の仲間が引き続き行動を共にし、後の仲間は何らかの理由で別れる」結末になると言う、“ルール・制約”を勝手に自分に課しています。

 現在、ヒャッハースローライフも若シニも、二人の仲間と共に旅立ち、二人の仲間と別れています。

 一作目のヒャッハースローライフでは、前ゲームから連れ立っているのは一人だけだったので、三人と別れた後だったのでしょう。

 ただし、別れると言っても今の所喧嘩別れのケースはなく「疲れたからゲームせずに休む」だとか「このタイトルでやり残した事があるから、それを済ませたら主人公を追い掛ける」と言ったものばかりで、今後の後続タイトルでの再会の余地は残してあります。

 

 まだ二作しか書いていない現状でシリーズ全体の展望をあれこれ述べるのも鬼が笑いそうですが、この形式を取っているのには色々と理由があります。

 これが現実だとするなら、別段不満がなければそのまま仲間で居続ければ良い(10人だろうが20人だろうが徒党を組み続ければ良い)のでしょうし、慣れ親しんだ人物が出てきた方が別タイトルも読みやすいのだろうとは思います。

 しかしまず、主人公“以外”の仲間の視点で語られる関係上、仲間の数は四人+約一人(敵対プレイヤー視点)が限度であろう事。

 そして、適度に主要人物を循環させる意図があります。

 これから何作思い付くかは私自身にもわかりませんが、そのゲームの住民ならではの人間性や視点を自由に書くためにも、新しい仲間を登場させる余地も残しておきたい所でした。

 実際、若シニで新たに登場した二人はゲームの世界観・テーマに良く合致していたと自己評価しております。

 

 ある意味で「恣意的な結果ありき」でこう言う事を決めるのはどうなんだ? と言う声も聞こえてきそうです。

 例えば「モテる話を書きたい」と言う結論ありきで書いていると、異性が寄ってくる様が不自然だったりご都合主義だったり、作者の願望が透けてしまったり……と言う失敗と紙一重の試みでもあるのかも知れません。

 ただ、気軽に出会いと別れを循環させられるのも、VRゲームの世界ならではなのかも知れません。

 これが現実での旅となると、気軽に再会、と言う訳にもいかないでしょうし。

 また、あるゲームを終えて次へと移住するにあたり、選択肢は人それぞれでもあるでしょう。

 VR社会では、一つの“世界”に縛られる必要は無いと言うのが、個人的にはジャンルとしての魅力に感じられ、また、当シリーズ共通のテーマにもなっています。

 

 なお、以下は当該作品の微ネタバレになるかと思います。

 誰を残して誰と別れさせたかの人選が、間接的に分かってしまいそうな話なので。

 

 

 ヒャッハースローライフでの人選は「比較的キャラが無難で、次回作でも動かしやすそうな」二人を残し、

 逆に「本編で強烈な個性を放っていた(当社比)」二人と別れさせました。

 一応、別れさせると決める前に、次回作に出てくるとしたら、どんな活躍をするかと言うシミュレートは全員分しました。

 結果、離脱組となった二人は、ヒャッハースローライフと言う作品で「やりきった」感があり、続投させると却ってしつこいかな? と判断しました。

(繰り返しますが、再登場の余地は残してあります)

 そういう意味ではこの試み、続編向けの人物と、単発向けの人物の感覚を養うのにも良いかも? と思いました。

 その次の若シニでは「無難な人物その1と、今回でネタを出し尽くした人物その1」を同行させました。

 逆に離脱組も同様に「無難な人物その2と、今回でネタを出し尽くした人物その2」と言う、綺麗な対称を描きました。

 これには、前作ヒャッハースローライフでの判断に対する反動がありました。

 当初は無難な人物を二人とも残し、ネタの出尽くした二人を離脱させようと思っていましたが……それではヒャッハースローライフと同じ人物が残ってしまいこのシリーズで目指している「主要人物の循環」にならないと思ったので。

(主人公含め、この三人をずっとメインに据えるのもそれはそれで面白そうなのですが)

 やはり、この「続投出来るのは二人まで」と言う制約は、新たなアイディアの呼び水として良いものかも知れません。

 次回、若シニでネタの出尽くした人物Aが思わぬ活躍をするような良案に繋がるかも知れませんし、そうでなくてはならないと肝に銘じております。

 

 ちなみにこのルール、予告なく破る可能性もあります。

「それよりも面白い選択肢」が出た場合、誰に言われたわけでもない制約に固執しては本末転倒です。

 誰しも物語を書く本懐は、少しでも面白い展開にする事である筈ですから。

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