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今隣にいる彼は、素敵な人だ。こんな私を気遣ってくれて、大切にしてくれる。仕事が上手くいかない時も、体調が悪い日も。日によってころころと変わる気分に振り回されている私をいつも優しく包み込んでくれる。
「もうすぐ1年記念だしさ、最初に行ったあのカフェ行かない?」
記念日だって忘れないし、女の子の欲しい物を全てくれる人。彼は私を愛してくれているし、こんなにも幸せをくれている。なのにどうしてだろう。
朝からカフェに行って、ショッピングして、そんな穏やかな記念日の夜、すやすやと寝ている彼に聞こえないように泣いた。
女の恋愛は上書き保存なんて言うけど、本当にそうなんだろうか。私が男脳なだけ?いや、違う。ただ今日のカフェもお店も、全部全部思い出すのはあの人の顔。それだけ。
「どうしたの、怖い夢でも見た?」
聞こえないように泣いてたはずなのに、彼は目を覚ましてそっと頭を撫でてくれる。あの人はそんなことしてくれなかったよ。ずっと腕枕してくれるの?腕、痺れちゃわない?
「そう、ちょっと嫌な夢みたの。大丈夫。」
瞼を閉じたらふとあの人の顔が浮かぶから、今日もちゃんと寝れそうにないな。もうこんな幸せは二度と来ないってわかってるのに。
彼の優しい温もりを感じながら、私は今日もあの人がくれた何もかもを捨てられずにいる。
恋愛短編集 葉訓 @darudaru-life
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