13冊目 天駆ける君へ

「さて、これで旅立つ準備はできた。」


そういうと君は電話を切った。


何度かけても出ることはなかった。




・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・


参考書で何度も出てきた。

without saying goodbye というやつだ。


でもきっとこの方がいろいろな人に知られずに終わることができる。


荷物もなにもかも家に置いたまま、家族にばれないように朝方抜け出してきた。


でもなにも持ち物はいらない。

この身を流れば最後である。


ここにたどり着くまでいろんな曲を聴きながら来たけど、どの曲も心に刺さることはなかった。

すべて他人が作った歌。

すべて自分部のことなど知らない人が作った歌。

独りよがりに聞こえたんだ。


なにが希望だ、なにが勇気だ。

曲1つで人生変わったらそんな楽なことなんかない。


結局僕は変わらなかった。


アイデンティティーもはっきりしないし、誇れるものもない。

ああ、退屈な人生だった。

これで終わりにしよう。




そうして一歩足を出して、僕の人生は終わったのだった。






架空小説からの引用・・・「天駆ける君へ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

架空小説からの引用 小野 恋待 @brain-fragment

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る