12冊目 砂嵐

「てめえ、ちょっとこっちこい。」


晴久の胸倉は宙に浮いた。


連れてこられた路地裏には隣町のヤンキー高校の生徒が数人見えた。


暗い路地裏の中で黒い学ランがぞろぞろ動くのが見える。


換気扇の下に立たされるとグループの中核であろう男が口を開いた。


「おい、お前石高いしこうだよな?西丸って知ってるだろ。」


西丸とは、晴久の幼馴染の西丸有一郎にしまるゆういちろうのことで、昔から悪いやからをからかっては、戦争を繰り広げている。



一番最初の事件は中学の時である。



隣の学区にある富永西中のリーダーのバイクのタイヤをわざわざ彼の家に行ってライターで炙り溶かしたことがばれ、町中で捜索が始まったことがある。

その捜索は3日ほどで収まったのだが、結局彼がどのように事態を収めたのかわからない。


中学卒業間近には石崎第四中の卒業式に乗り込み、不良グループのリーダーの受け継ぎ式をめちゃくちゃにしたという噂まで流れてきたことがある。


彼はなぜそんなことをしているのだろうか。


西丸のことを思い返していると、目の前に拳が伸びていた。


ボコッ


やはりヤンキーのパンチは痛いな。


「おい、さっきから聞いてんだろうが。」


ヤンキーはさっきより顔にしわを寄せて聞いてくる。変な香水と口のにおいが合わさってなかなかひどい状況である。


「悪い悪い、あいつは多分川っぺりにでもいるんじゃないかな。」


そう答えるとヤンキーはそそくさと仲間を引き連れていってしまった。






架空小説より引用・・・「砂嵐」

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