第8話 追憶

・・・・・・・・・・空来がいなくなって1年・・・・・・・・・・・・


毎日忙しく仕事をしている!

仕事が評価されて海外支店の責任者に抜擢された。


今日はこの家を引き払う日なので、最終的な後片付けをしている。

明日にはニュージーランドに向かって旅立つ!


空来の事も思い出になりかけている。


・・・・・・・・・あの時、空来の後をつけなければ良かった。・・・・・・・・


あの時、空来の姿を追って歩いて行ったが、細い路地を曲がったところで完全に見失ってしまった。

とても脇道も無い小さな道なのに・・・。


ふーっと消えてしまった。


その時にとても嫌な予感がした。

してはいけなかった事をしてしまったような・・・・。


その日から空来と連絡がとれない。

電話をしても「現在使われていません」


この状況を理解するのがとても出来なかった。

なぜ?

何が起こっている?

電話番号しか知らない。

住所も、職場も、空来の家庭構成さえも聞いたことが無い。


普通に考えれば分からない事の方が多かった。

でも、空来といる時間がそんな事を苦にしなかった。


しばらくは何も考える事が出来なかったが、妻を亡くして空来と出会い、どん底から立ち直った経験が、今はとても生きている事が分かる。


前を向く事を教えてくれた!

次に進むことの大切さ、人との関りが自分を変えてくれる事も。


さあ、今日から新しい生活が始まる。

今までの家を出る朝になった。

妻との思い出も、空来との思い出も心に秘めて頑張れる。


玄関を出ると、1匹の猫が私の方を見ている。

今まで、この辺りに猫の姿など見たことが無かったので、少し違和感があった。


特に動物が好きではないが、逆に嫌いではない。

猫を飼っていた友達の家にも行った事もある。


その猫が近くに寄ってきた。

真っ白な猫で、どこか懐かしい感覚さえある。


「どうした?おまえは迷子にでもなったか?」


その猫は、私の足元から離れない。


「ごめんな。今から出かけるから何もないんだよ」

「気をつけておまえの家に帰るんだよ」


そう言って頭を撫でてみた。


・・・・・・・・・・・・・この感覚・・・・・・・・・・・・・


何故そう思ったか分からないが・・・・・。

空来に触れている時の感覚に限りなく似ていた!


「え!」

「空来?」

「いやそんなはずないよな」


その白い猫は、まっすぐ私を見ながら一声鳴いた。


そして私の周りを一周してゆっくり離れていった。


何度も振り返りながら・・・・。


「まって」

「空来なのか?」


その言葉を言った時にその猫はふーっと消えたように見えた。


まさか・・・・・・。


そんな思いを抱きながら空港に向かった。

もしかしてと、何度もバスの窓から外を見たがもちろん白い猫の姿は無かった。


・・・・・・・・・・・・・「気のせいだよな」・・・・・・・・・・・


それからニュージーランドについてから仕事に没頭した。


・・・・・・・・・・・・ある日、家の前に白い猫が・・・・・・・・・・・


                完


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遥かなる想いと空からの贈り物 @ks19630114

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