第2話 生還

白いカーテン白いベットの部屋の中で、1人の男が呼吸器や色々なコードを取り付けられて重々しい様子で横たわっている。心電図の線がピーとなり、これは今度こそダメだろうと、誰もが思った。

医者は遺族から延命を頼まれては、いなかった。今回は、家族が誰も来ていないなかで、医者と看護師は頷きあった。

そして、最後の確認をしようとした時、心電図の計器が、ピッピッ ピッピッと上向きに上がっていく。若い担当医が「嘘だろう。こいつはなんなんだ。信じられない」周りに家族がいないことをいい事に、つい口が滑った。年期がはいったナースがなだめるように「先生落ちついてください。呼吸が安定してきています」


この病院では、いや日本中でもこのような患者は、初めてだろう。初めての危篤状態になった時には、家族中がむせり泣きなんとか生還できた時奇跡だと喜んだ。しかし今回で6回目であり、167歳になった今・・・子供や孫が先になくなり、ヤシャゴややしゃしゃごの世代になると(あんた、誰?)状態である。しかしマスコミにもてはやされ、ギネスにも載った手前邪険にもできない。いっときは、研究対象として病院で預かっていたが原因不明なのである。それに年金費用でもまさか国もこんなに長命になるとは思わなかっただろう。国が費用を出し渋りしだしたのだ。

しかも患者こと、問掛 三郎は病院に運ばれて生還をすると通常の生活にしばらくは戻れるのだ。自分で家事全般をこなす。憧れの老人・・・。しかも生死をさまよっている際白い大きな部屋にいてカタツムリの列に、ついていくと扉があって生還できると口にしてからはカタツムリにあやかって三郎カタツムリと、ネーミングされたグッズなどが売れに売れた。

印税も入り気楽な隠居生活。

しかし6度目ともなると精巧に造られたロボットではないだろうかとか?

本人を前にして心無いことを口にする輩も出てきた。


三郎は周りの景色がハッキリしてくると悟った。また、生き延びたのだ。しかしこれでいいのだろうか。さすがに周りから煙たがられているようだ。

「死にたい」いつしか、心の中でそう呟くようになった。





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デジャブ クースケ @kusuk

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