人工ダイヤモンドの輝き~どこまでもホンモノで、最後までニセモノな……~

アレン

人工ダイヤモンドの輝き~どこまでもホンモノで、最後までニセモノな……~

 人工ダイヤモンドの輝き~どこまでもホンモノで、最後までニセモノな……~


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 本物でありながら偽物と蔑まれ、本物とは認められない。

 望まれて生まれてきたのに罵倒され、行き着く先は……


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「なによ、あの男。これパチモンじゃない。でかい口叩割に店でも大したもの頼まないし……」


 終電のなくなった帰り道。

 まばらな光に照らされた薄暗い裏道に、女性の声が響く。


 ふと視線を声の方向に向ける。

 ボロボロの電光掲示板にはブランド、宝石、貴金属の文字列。

 こんな夜中まで営業しているところを見るに、水商売で働く人相手に商売しているのだろう。


「あっ、」


 女性はどうやら俺に気づいたらしい。

 気まずそうな顔をして。

 されど怒りは収まらないらしく、何かを地面に投げつけて小走りにより暗い方へ消えていった。


 こういうことは、そう珍しいことでもない。

 明日も早い、俺は自宅に向け足を進め、目に刺した光に再び視線を戻された。


 地面にきらきらと輝く何かが落ちている。


 近寄り拾い上げてみると、それはダイヤモンドのついた指輪だった。

 いや、先ほどの女性の言葉から察するに、偽物なのだろうが。


 ボロボロの電光掲示板とまばらな光を一心に集め、きらきらと光り輝いている。


 きっと店内でごねて、追い出されて、捨てていったのだろう。


 俺はその光に目を奪われた。

 このダイヤは偽物なのかもしれない。

 でも、この輝きはきれいで心を奪われ、どこまでもホンモノだった。


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 どうやらこのダイヤ本当に本物だったらしい。

 いや、本物と言っていいのか怪しいが。


 人工ダイヤモンドと呼ばれる、文字通り人工的に作られたダイヤモンドのようだ。

 昔は天然物の十分の一程度の価値があったらしいが、技術の進歩とともに量産され今では大した価値はないらしい。


 人工……


 望まれて生まれてきたのに偽物だなんだと罵倒され、最後には薄暗い道端に投げ捨てられる。


 はは、まるで俺みたいじゃないか。


 そうか、天然と人工か。

 人は昔から、何も変わっていないんだな。

 俺もいずれこいつみたいに……


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「夜景が綺麗だ……」


 勤めている会社の屋上。

 定時なんてものはとうに過ぎ去り、終電の時間も刻一刻と迫る。

 終わる気配のない仕事を抜け出し、ここにやってきた。


 俺もさっきまで、この綺麗な夜景の一部だった。

 夜景の一つ一つの光は、命をすり減らし働く社畜たちの声なき悲鳴だ。

 そんな悲鳴を取り込み、指につけたダイヤはきらきらと光り輝く。


 よりダイヤをきれいに光らせよう。


 夜景に手を伸ばし……


 俺が最後に見た光景は、ホンモノ以上に光り輝くニセモノのダイヤモンドだった。


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 クローンの存在が、徐々に認められつつある世界。

 しかし天然物の人類同士でも差別は起こる、当然人工に対する差別は根強いものがある。


 人のクローンとして、望まれて生まれてきた一人の男は、社畜によって光り輝く夜景にその身を投げ出した。

 その指には、ひときわ光り輝く人工ダイヤモンドの指輪が……


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人工ダイヤモンドの輝き~どこまでもホンモノで、最後までニセモノな……~ アレン @aren_novel_No100

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