エピローグ:星を見上げるもの

「ここでいいよ。ありがとう」


 竜は島の一つに着陸し、子供たちを降ろした。

 子供たちは島の学校へと向かっていく。

 竜はその背中を見送ったあと、ゆっくりと飛び立ち自分のねぐらへと帰って行った。

 また夕暮れになる頃には迎えに行き、子供たちを乗せていくのだ。


 飛行機を作って以後、人間は空を行き交い国々へと旅する事が増えた。

 しかし竜が思ったほど、飛行機を乗りこなす人間と言うものは現れない。

 飛行機は竜も驚くほどの機動力、速度があったが、乗りこなす人間にもそれなりの強さを求めて来た。

 それは操縦技術であったり、空間認識能力であったり。

 要は道具に対してまだ適応できてない人間の方が多いのだ。

 

 竜は残念に思っていた。

 もっと人間が空を飛ぶことが出来たなら、もっと自分も楽しく生きていけるはずなのに。

 鳥は話してくれないし、自分が近寄ると離れていく。

 人間だけが自分のいう事を理解し、もっと進化していく可能性がある。

 機械を作るのも良いが、もっともっと新しい何かを作るべきなのではないだろうか。


 ふと、竜はねぐらから出て流線形へと形を変化させ、急上昇を始めた。

 ぐんぐんと地上から離れ、空を抜けて、辿り着くは宇宙そら

 最近の竜は地球を見下ろすのが一つの楽しみになっていた。

 時折、竜の傍らを人工衛星が通り過ぎていく。

 たまに地球から上がるロケットを見るのも乙なもので、見る度に前脚を振ってやる。

 中から見えないだろうけど。


 人間は空を超えて、ようやく宇宙への第一歩を掴み始めている。

 

 もし宇宙に人間が進出し始めたら、一緒に遠くまで行きたい。

 銀河の果てを見るのだ。

 果てに何があるのか、まるでわからないがきっと人間ならば一緒に行くだろう。

 

 好奇心と想像力に限りなく、ある種愚かな彼らなら。


 竜はゆっくりと目を瞑り、漂う。

 宇宙そらの果てに思いを馳せながら。

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そらを見上げるもの 綿貫むじな @DRtanuki

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