海と空に彩られた、瑞々しい青春の風景

 離島で暮らす少年と少女の、内緒のお泊まり会の物語。
 思春期の初々しい恋を描いた、青春もののお話です。見知らぬ不思議な少女との出会い、という意味では、一応ボーイミーツガールとも言えるかもしれません。お話の肝はあくまでこの「不思議な」の部分で、その具体的な内容は読み進めるにつれ明らかになっていくのですけれど、少なくともただの見知らぬ相手同士というだけではない、異なる背景を抱えたもの同士が惹かれ合うところにロマンを感じました
 例えば、言葉が通じないこと。お互いに異なる言語を話す、言うなれば未知の文化圏の存在であること。さっきは「見知らぬ不思議な少女との出会い」と書いたものの、これはあくまで少年の側から見た場合の話であって、少女の側からもまったく同じことが言えるところも魅力的でした。というか、実際、両者の側から描かれているのですけれど。
 本来であればきっと交わることのなかったであろうふたりが、世界の片隅でひっそりと積み重ねる、秘密の逢瀬のドキドキ感。なんとなく憧れてしまう幻想的なシチュエーションでありながら(言葉の通じない同年代の異性との出会いって多分そんなにないので)、しかし同時に誰しもが経験し得る普遍的な冒険でもある、瑞々しく爽やかな青春の物語でした。