不幸な境遇の美少女と、アウトローおじさんの逃避行

 反社会勢力の末端で運び屋業を営む男性と、その荷物である借金のカタに売られた中学生の少女の、出会いとその後の数日間の物語。
 現代ドラマです。現代日本を舞台にした、特に超常的な不思議要素などのないお話。とはいえ、描かれているのは必ずしも平凡ではないというか、アウトロー的な社会だったりまた不遇な家庭環境であったりと、いわゆる「平和な日常」のようなものとは縁遠い世界です。少なからずこの現実のどこかには存在しておれども、きっと多くの人にとっては身近なものではない、すぐ隣のどこか遠い世界の物語。
 個々の要素としては結構ハードな内容もありながら、しかしあくまでも大衆娯楽作品としての軸はぶらさない、サービス精神に溢れた作品であるように思います。成人男性がひょんなことから不幸な境遇の少女を拾い、持ち前の優しさでその心を解きほぐし、やがては思いを寄せられるようになる、というお話の筋。ある種の夢や願望の顕現みたいなところがあるというか、何か思い切りの良さのようなものが大変特徴的でした。ジャンルとしてのラブコメの技法にも近い、作品の基本スタンスとして「欲求の充足」をしっかり据えた作品。
 作品紹介にもある通り、本当に一部ハードな内容も含むものの、だからこその悲惨さが感じられる作品でした。