第5話 素敵な贈り物

時の忘れ物亭に迷い込んでしまった少年の記憶を求めBC2万年、AD1100年、AD300年と旅をしてきたアルド、エイミ、リィカの三人。少年に真実を伝えるために彼らは再び時の忘れ物亭へと向かうのであった。時の忘れ物亭に着くと、そこにはマスターと少年がいた。


少年

「あっ、お姉ちゃん達だ!」


マスター

「いらっしゃい。そろそろ来る頃だと思ったよ。」


アルド

「ああ。でも上手くいくかは分からない。」


マスター

「きっと大丈夫。自分達のやってきたことを信じるんだ。」


マスターの言葉にアルド達は頷く。


エイミ

「早速だけど始めましょう。 話す役目は私に任せて。」


そういうとエイミは少年に向かって語りだした。少年は静かにエイミの話を聞いていた。


エイミ

「あなたは何度も命の危機にさらされ、その度に時空を越えて今ここにいるの。まずこれを見て。」


エイミは少年にオーブを渡して、再生ボタンを押した。


エイミ

「これはあなたが赤ちゃんの時の映像よ。あなたはリディとして生まれてきた。でも火事が起きて両親と離ればなれになった。火事の時、このオーブがあなたを未来の世界へ連れて行ったの。次はこの写真を見て。」


そう言ってエイミは少年に未来で貰った家族写真を渡した。


エイミ

「まだ赤ちゃんだったあなたは未来の世界で写真に写っている夫婦に拾われ家族として過ごすようになったわ。その頃のあなたの名前はルックだった。だけど悪い大人にさらわれて、オーブによってあなたが生まれたときよりずっと昔の時代へ行くことになったの。そして最後はこれ。」


エイミは古代で貰ったペンダントを少年の首にかけてあげた。


エイミ

「昔の時代へ飛ばされた後、倒れていたあなたをとある夫婦が助けたの。夫婦はあなたをセンドと名付け家族として迎え入れたわ。でもある日あなたは両親と離ればなれになって、この場所、時の忘れ物亭に来てしまったの。おそらくオーブの力でね。このペンダントはその時代の両親からあなたに渡して欲しいと頼まれたものよ。」


少年

「リディ…ルック…そしてセンド…。」


エイミ

「そうよ、あなたには3つの名前がある。そしてその一つ一つに、名付けた両親の想いが詰まっているの。」


少年

「オーブ…唄…お母さん…お父さん…。そうだ!僕は…。」


エイミの言葉で少年は何かを思い出したようだ。


エイミ

「どう?思い出した?」


少年

「うん!僕にはやらなきゃいけないことがあるんだ!」


少年の気持ちに反応したのかオーブが光り輝いた。


リィカ

「ナント、オーブが反応シテイマス!」


マスター

「どうやら上手くいったようだな。外に出たら帰るべき道が出現しているだろう。」


少年

「ありがとう、おじちゃん。」


マスター

「フッ、礼ならアルド達に言ってくれ。」


アルド

「それじゃあ、外に出ようか。」


アルド達が少年と共に外に出ると道の奥に時空の穴が出来ているのが見えた。


エイミ

「あの穴かしら?」


リィカ

「どうやら、オーブはアノ穴と共鳴シテイルヨウデス。」


少年

「お姉ちゃん達も一緒に来てほしいだけど、いい?」


エイミ

「もちろん。ちゃんとあなたを見送らないとね。」


アルドとリィカも頷いた。


少年

「じゃあ、行くよ。」


アルド達は少年と共に時空の穴に飛び込んだ。時空の穴の先はチャロル草原であった。


アルド

「ここは…。チャロル草原か?」


少年

「僕は、あの時ここへお花を摘みに来たんだ。でもアイツが急に…。」


その時、アルド達の近くで再び時空の穴が開いた。


少年

「来るッ!」


時空の穴から出てきたのは、以前ルチャナ砂漠で戦った合成人間と次元戦車だった。


アルド

「お前はあの時の!」


合成人間

「マサカ時空の穴の先で再びお前達と会うとハナ。ソシテ、ソコノ小僧。オーブを持っていたカラよく覚えてイルゾ。さあ、お前の持っているオーブをコチラにヨコセ。」


アルド

「未来でこの子をさらった二人を雇ったのはお前だったのか。どうしてオーブにこだわるんだ!」


合成人間

「フッ、まあイイ教えてヤロウ。そのオーブには、とあるデータが隠されている。そのデータとはクロノス博士が考案シタ幻視胎の起動プログラムだ。」


アルド

「幻視胎だと!?あのとき幻視胎が動いたのはそういうことだったのか。」


エイミ

「セバスちゃんの言ってたことは間違いじゃなかったみたいね。」


合成人間

「ソレニ加エテ、このオーブの時空に干渉する力は素晴ラシイ。小規模な時空の移動をこのオーブ1つで可能にスルのだ。コレを使えば我々の兵士を密カニ過去に送る事ダッテ可能ダ。」


エイミ

「そうやって歴史を好きなように書き換えるつもりなのね。そんなことのために、この子の大切なものを奪おうとするだなんて許せない。」


合成人間

「そのオーブは元々小僧のモノではナイノダ。ナラ誰ガ持トウト関係ナイ。」


アルド

「だからといってオーブを奪って悪用するなんてことを黙って見過ごすわけにはいかない。」


合成人間

「ホウ、威勢だけはイイナ。ダガお前達はコノ次元戦車に負けてイルことを忘れてナイカ?」


リィカ

「相手の繰り出すブレスは確かに強力デス。デスガ、オーブがこちらにアル限り強力なバリアを張ることは出来ないハズデス。」


合成人間

「ソレガドウシタ。攻撃サレル前に倒セバいいダケダ。ヤレ、次元戦車。」


エイミ

「まずいわ。このままじゃこの子まで…。」


次元戦車

「ウォォォォォ。」


合成人間の指示に従い次元戦車はブレスを放ったそのとき


少年

「僕はもう逃げたり泣いたりしない。だから、お姉ちゃん達を助けて!」


少年の言葉に反応してオーブは光り輝き、アルド達はバリアに包まれブレスの攻撃を防いだ。


アルド

「これは…砂漠であいつの出した障壁に似ている。」


リィカ

「ドウヤラ、コノ子がオーブの力を引き出シタようデス。」


合成人間

「仕留めソコナッタカ。ダガ次コソ…。」


次元戦車は再びエネルギーを溜めている。


アルド

「そうはさせない。みんな、今が攻撃のチャンスだ。」


リィカ

「胴体部分が頭部にエネルギーを供給しているヨウデス。」


アルド

「よし、エイミとリィカは胴体を攻撃してくれ。俺は頭部をやる。」


エイミ

「オーケー。任せといて。」


リィカ

「了解デス。コンバットモード起動!」


エイミとリィカは胴体を攻撃し、エネルギーの供給を断つ。次元戦車はブレスを放つことが出来なかった。


合成人間

「馬鹿ナ。コンナハズデハ…。」


アルド

「この子の想いに俺達は応える。これでもくらえ!」


アルドは大きくジャンプして次元戦車の頭部を攻撃した。アルドのとどめの一撃で次元戦車は大きな爆発音とともに消えてしまった。


アルド

「これで終わりだ。」


そういってアルドは合成人間を斬る。


合成人間

「マサカ、次元戦車がヤラレテしまうトハ…。未来ハ我々合成人間の手ニ…。」


合成人間はそう言い残して活動を停止した。


エイミ

「終わったようね。大丈夫?怪我はない?」


少年

「うん、大丈夫。あいつを倒してくれてありがとう。」


少年は次元の狭間に来た経緯を振り返る。


少年

「僕はあの時、お花を摘みにここまで来たんだ。でもあいつがやってきて、このオーブを奪おうとした。僕は逃げようとしたけど体が動かなくて…。もう駄目だと思ったとき目の前に大きな穴が開いて気が付いたらおじちゃんたちの所にいたんだ。」


リィカ

「ドウヤラさっき倒した合成人間のセイデ、コノ子は次元の狭間に来たヨウデスネ。そしてワタシたちは今、ソノ現象が起きた時代へ来ているヨウデス。」


アルド

「それじゃあ、もうこの子が次元の狭間に飛ばされることはないんだな。両親も心配しているだろうし、そろそろサルーパの村に行こうか。」


サルーパに戻るとそこにはセンドの両親がいた。


センドの両親

「おーい。」


センド

「あっ、お父さん!お母さん!」


センドの母親

「もう、あまり遠くへいっちゃダメって言ったしょう。心配したんだから…。」


センド

「ごめんなさい…。でもこの花をお父さんとお母さんに贈りたかったんだ。」


センドの母親

「もう…。」


センドの父親

「まあ無事だったんだから良かったじゃないか。おや?あんた達は?」


センドの両親はアルド達に視線を向ける。


センド

「お姉ちゃん達が傍にいてくれたんだ。」


センドの父親

「そうか、俺からも礼を言わせてくれ。それにしても、あんた達どこかであったことがあるような…。」


アルド

「い…いや、き、気のせいじゃないかな。(時空を超えてきたなんていったら話がややこしくなるな…)」


センドの父親

「そうか、ありがとな。」


エイミ

「センド、お父さんお母さんに会えて本当によかったわね。それじゃあ、元気でね。」


センド

「あっ!ちょっと待って。お姉ちゃん達に話したいことがあるんだ。」


エイミ

「話したい事って?」


センド

「実は相談したいことがあって…。別の時代のお父さんお母さん達は僕がいなくなってきっと寂しい思いをしていると思うんだ。寂しい思いをさせないためにはどうしたらいいかな?」


エイミ

「そうね…。二人はどう思う?」


アルド

「寂しい思いをさせないか…。単純に手紙とかはどうだ?」


リィカ

「手紙…、時空を超えて思いを伝エル…。ソウデス!ソノ手がアリマシタ。」


リィカはアルド達に作戦を伝えた。


アルド

「確かにそれなら。俺もその作戦に適した場所には心当たりがある。」


場面は変わり、AD1100年のエルジオン。ルックの両親は、二人とも自宅にいた。母親はオーブを手に持っている。オーブの再生スイッチを押すと少年の姿が映し出された。


センド

「お父さん、お母さん、僕を覚えていますか?信じられないかもしれないけど、僕は今、自分が生まれた時よりもずっと昔の時代で暮らしている。ここには別のお父さんお母さんもいてセンドっていう名前をくれたんだ。もう元の時代に帰ることが出来ないのは残念だけど、ここで生きることに決めた。お父さんお母さんには僕のこれからをこのオーブを通して見てほしい。」


一方AD300年のザルボーのリディの両親の家では旅に出ていた父親は戻ってきており、二人もオーブに記録された映像を見ていた。オーブの映像にはセンドが成長していく過程が映っている。友達と遊ぶ姿、恋人ができ、二人は結ばれ子供を授かる様子など様々な場面が映っていた。映像の最後で大人になったセンドがこう締めくくる。


大人のセンド

「私はあなた達と離ればなれになってしまった。でも、両親の愛情はハッキリとこの胸に残っているし、今こうして成長した姿を見せることが出来て、私は幸せです。最後に、お父さん、お母さん、産んでくれてありがとう。育ててくれてありがとう。

センド=リディ=ルック」


オーブの映像をみて夫婦は息子の成長と感謝の気持ちに涙を流した。


一方バルオキーでは村長の家の一階でアルド達は村長、フィーネと共に食事をとっている。アルド達がバルオキーへ戻ってきたとき、どうやら村長から話を聞いたフィーネはごちそうを用意していたようで、エイミとリィカも誘われている。


村長

「こんなに大勢でとる食事は久しぶりじゃのう。」


フィーネ

「お兄ちゃん達、長旅で疲れているでしょ?たくさん作ったから、どんどん食べちゃって。リィカさんには特別にこんなものを用意したんだ。」


リィカ

「コレハ!このオイルには様々な植物の種子から採ラレタものが絶妙なバランスで配合されてイテ、ワタシのナイスなボディーに良クなじみマス。お心遣いに感謝しマス、フィーネさん。」


フィーネ

「喜んでくれて良かった。」


食事の途中でエイミはサルーパで考えた作戦について振り返る。 


エイミ

「それにしてもうまくいったわ。オーブにあの子のことを記録させて地中に埋めてもらう。それをアルドの時代で回収してリディの両親に見せる。またそれを地中に埋めてもらい私達の時代で回収して今度はルックの両親に見せる。こんなのよく思いついたわね、リィカ。」


リィカ

「あのオーブには時空に干渉する力がアリマス。ダトシタラ、時の経過に耐エラレルように加工サレテイルと考えたのデス。セバスちゃんサンがオーブを修理して下サッタのも助かりマシタ。」


アルド

「サルーパには代々護られている地蔵があって、丁度そのあたりが適してるんじゃないかと思ったんだ。」


フィーネ

「もう。お兄ちゃん達だけでずるいよ。私も一緒に行きたかったなあ。」


アルド

「フィーネ、ごめんな。それにあのオーブはクロノス博士の…。」


フィーネ

「ううん、いいの。きっとそれは、あの子を助ける運命だったんだよ。」


エイミ

「ええそうね。あの子はずっとあのオーブそして両親の思いに守られていた。あの子の感謝の気持ちを伝えられて良かったわ。」


フィーネ

「フフッ、エイミさん、なんかお母さんみたい。」


エイミ

「もうやめてよフィーネ。私は…母親に今の自分を伝えられなかったから、あの子にはそんな思いをしてほしくなかったの。」


アルド

「エイミ…。」


エイミ

「さあ、しんみりするのはここまで。今日はパァーッといきましょう。」


アルド

「そうだな。よし、たくさん食べるぞ。」


アルド

「(エデン、俺達やったぞ。いつかきっとお前のことも…)」


そしてセバスちゃんはというと、自宅で何かを研究しているようだ。


セバスちゃん

「あの時アルド達には黙っていたけど、オーブの構造は既にすべて記録していたのよね。それじゃあ、これからゆっくりと調べさせてもらいましょうか。」


セバスちゃん

「んっ?これはなにかしら?」


セバスちゃんが隠された映像を再生するとそこにはマドカ博士の姿が映っていた。


マドカ

「どう?聞こえるかしら? フフッ、パパは、試作品だから後で廃棄するって言っていたけど、勿体ないわよね。だから、今後のためにこんな機能をつけてみたの。私達家族は近いうちに、完成品を使って遠い昔の時代へ行くことでしょう。この技術が家族の思い出を紡ぐことになりますように。 マドカより」


再生が終わり、セバスちゃんは微笑む。


セバスちゃん

「フフッ、後でアルド達にも知らせてあげなくちゃ。」


おわり


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