第4話 時の遺物
セバスちゃんの家についたアルド達は彼女から謎多きオーブについての報告を受けることに
アルド
「ごめん、遅くなった。ちょっと色々あって…。」
セバスちゃん
「まったく…待たせすぎよ。まあいいわ。とりあえずこれをみて。」
そう言うと彼女はオーブの解析結果をアルド達に見せる。
セバスちゃん
「リィカの言った通り、このオーブは一見サウンドオーブに見えるけど、中にゼノプリズマを用いた技術が隠されているわ。そう、ここがちょうどこの部分…」
彼女はオーブの中心部分を指差した。
セバスちゃん
「これは推測するに時空に干渉する役割があると思うわ。」
アルド
「時空に干渉する?どういうことだ?」
セバスちゃん
「まだ実証出来てないけど、あんた達が通ってきた時空の穴を人工的に生み出すと考えられるわ。」
リィカ
「セバスさんトモあろう方が実証出来ずにいるとトハ、相当複雑な仕組みのヨウデスね。」
セバスちゃん
「セバス”ちゃん”よ、何度も言わせないで。仕方ないじゃない、こんなにも複雑な仕組み私にも手に負えない。だけど確実に言えることがあるわ。」
エイミ
「どういうこと?」
セバスちゃん
「このオーブを開発したのは他でもないクロノス博士だってこと。私にも手に負えないってことはつまりそういうことなの!」
セバスちゃんの根拠が不確かな主張にアルド達は少し戸惑う。
エイミ
「えーと、クロノス博士がこのオーブを開発したかどうかは置いといて。そのオーブに時空の穴を発生させる仕組みがあるのは確かなようね。」
エイミの言葉にアルドとリィカは頷く。
セバスちゃん
「えっ!なんで、あんた達が確信できるのよ?」
リィカ
「セバスちゃんサンから連絡を受ける前に、そのオーブから時空の穴が発生したトイウ話を聞いたのデス。」
セバスちゃん
「リィカ…あんたわざとやってるでしょ。それで?他に分かったことは?」
リィカ
「後ハ、オーブの少年が時空の移動を繰り返しているコトぐらいデス。」
アルド
「困ったなぁ。そのオーブの謎が少し分かったけど、これから一体どうすればいいんだ?」
エイミ
「あの子の記憶を取り戻すために、あの子が通った道をたどってきたけど、ここで行き止まりなのかしら?」
セバスちゃん
「その事だけど…このオーブ、記録装置としての部分が故障してたの。録音や再生のスイッチは既に機能していなかったし、あんた達が聞いた音声データは破損していたし…。とりあえず記録装置としての機能と破損したデータについては修復しておいたから、見てみる?」
エイミ
「ええ、セバスちゃんお願い。」
セバスちゃんはオーブの再生スイッチを押した。修復されたデータには映像もついていた。
撮影当時、オーブはどうやら台の上に置かれていたようで映像には揺り籠から少し顔を見せた赤子と女性の姿が映っている。
赤子
「びぇぇーん。」
女性
「あらあら、眠れないようね。」
女性は赤子に寄り添い子守唄を唄った。
女性
「ねむれ、ねむれ、かわいい我が子よ
祝福されし剣に守られ
人の祈りに優しく包まれ
ねむれよい子よ、よい子やねむれ…」
子守唄を聴いた赤子はすぐにねむりについた。
赤子
「スー…スー…」
女性
「まあ、もうすやすや寝ちゃってる。おやすみなさい、いい夢を見るのよ。かわいい、かわいい私のリディ。」
オーブの映像はそこで切れた。
アルド
「映像に映っていた女性、あの赤ちゃんのお母さんなのかな?あの子のことをリディと呼んでいたけど…。」
エイミ
「私もそうだと思う。そしてリディは私達が救おうとしている子供に違いない。リィカ何か分かったことはない?」
リィカ
「服装から判別スルニ、アルドさんのいるミグランス王朝の時代と思われマス。ソシテこの壁の造り、これはバルオキーではないでショウカ?」
アルド
「言われてみれば壁の造りが爺ちゃんの家に似ている…。その可能性は高そうだな。よし!次の目的地はバルオキーだ。」
セバスちゃん
「役に立ったようね。このオーブはあんた達に返しておくわ。もっと調べたいけど、唯一の手がかりだからあんた達が持っていた方がいいと思う。」
アルド
「ああ、セバスちゃん色々とありがとう。」
エイミ
「(あのセバスちゃんが研究対象を手放すなんて珍しいわね…)」
セバスちゃん
「何よ、エイミその顔は。私だって、その子を救ってあげたいんだから。」
エイミ
「フフッ何でもないわ。ありがとうセバスちゃん」
リィカ
「ワタシからも感謝申し上げマス」
セバスちゃん
「そんなに感謝されると照れるわね…。」
照れるセバスちゃんを見てアルド達は微笑んだ。
アルド
「それじゃあ、次の目的地に向かって急ごう。」
セバスちゃん宅を後にしたアルド達はAD300年のバルオキーへと向かった。バルオキーに着くとアルドは提案した。
アルド
「なあ、まずは俺の爺ちゃんに話を聞いてみないか? 爺ちゃん、この村のことなら大体知ってるし。」
エイミ
「確かにそれがよさそうね。」
アルドたちは村長の家へ向かった。
アルド
「ただいま、爺ちゃん。あれ、フィーネは?」
村長
「アルドや、おかえり。フィーネなら食材集めのために外に出とるぞ。」
アルド
「そうか…。フィーネのご飯は楽しみだけど、今日は食べられないかもしれないな…。」
村長
「ふむ、何か事情があるようじゃな。お仲間も一緒にいるようじゃが一体ワシに何の用じゃ?」
エイミ
「私たちリディという子供を探しているの。何か知っていることはない?」
村長
「ほう、人探しじゃったか。リディ…リディ…。そうじゃ!」
アルド
「何か思い出したのか?」
村長
「昔この村に、リディという赤子とその両親が泊まりに来たことがあっての。短い間のことだから思い出すのに時間がかかったわい。」
リィカ
「泊マリニ来たというコトハ、その家族は旅行デモしていたのデスカ?」
村長
「ふむ。父親は旅をしておって旅先で母親と出会い、子を授かったらしい。バルオキーには旅の途中で立ち寄ったそうじゃ。同じ旅人として彼と意気投合しての、この家に少しの間泊まらせてあげたのじゃ。」
アルド
「えっ、この家に!」
アルドと同じくエイミやリィカも驚く。
村長
「ちょうど、ワシがお前とフィーネを見つけたあたりの出来事じゃったから、覚えていないのも仕方なかろう。」
エイミ
「その後、家族はどうしたの?」
村長
「ザルボーを目指して出発したわい。父親の故郷らしくての、これからはそこで家族と暮らしていきたいと言っておった。」
アルド
「ザルボーか。爺ちゃん、ありがとう。」
アルドたちは出発の準備をする。
村長
「もう行くのか?」
アルド
「ああ、やらなくちゃいけない事があるんだ。」
村長
「そうか、十分気を付けての。フィーネにはワシから言っておくわい。」
アルドたちは頷いて村長の家を出た。
村長
「あのときからもう16年か…。アルドや、大きくなったのう。
そういえば、あの時、リディの母親が見覚えのない玉を持っておったな。この村に来たときは持っておらんかったのに…。これも何かの因果かのう。」
アルドたちはバルオキーからザルボーに向かう。ザルボーに着いたアルドたちは早速リディの両親を探すことに。
アルド
「さて、ザルボーに着いたけど、リディの両親は一体どこに住んでいるんだ?」
アルドが発したリディという名に、偶然アルドたちの横を通りかかった一人の女性が反応した。どことなくオーブから流れた映像の女性に似ている。
女性
「リディ…。あなたたち一体どこでその名前を?」
アルド
「信じてはくれないかもしれないが、このオーブから…」
アルドはオーブを取り出すと女性は驚く。
女性
「それは!」
反応を見てエイミは気づく。
エイミ
「もしかしてあなた、リディのお母さん?」
リディの母親
「ええ。でも、あなたたちはどうしてそのオーブを?」
リィカ
「ワタシ達ハ、トアル少年の記憶を取り戻ソウとしてイマス。このオーブは、ソノ子の育ての親から託されたモノデス。」
リディの母親
「そうなのね…。だけどリディは当の昔に火事で亡くなったわ。」
アルド
「火事で亡くなったって…!」
リディの母親は火事が起きた日のことを振り返る。
リディの母親
「私たち家族はここザルボーを目指しながら各地を旅していたの。バルオキーを発った後で悲劇は起きたわ…。私が町で買い物をしていると魔獣たちが攻めてきて当時泊まっていた場所に火を放ったの。私も主人も急いで駆け付けたけど遅かったわ。焼け跡からは何も見つからなかったけど、私はあの子はもういないと感じたわ。主人の方はあの子を探しにどこかへ行ってしまった。私はここで主人の帰りを待っているの。」
過去の悲劇を思い返したリディの母親はアルドたちに向かって言った。
リディの母親
「確かにそれは、私が拾ってきてあの子が気に入ってくれたオーブに似ているけど、私の勘違いのようね。あなたたちのいう子供はきっと同じ名前の別人じゃないかしら?」
アルドは首を横に振る。
アルド
「いや、そうとも限らないぞ。これを聞いてみてくれないか?」
そういってアルドはオーブの再生スイッチを押した。
オーブからはセバスちゃんの家で見た映像が流れている。
リディの母親
「まさかそんな! ここに映っているのは私とリディだわ。」
アルド
「このオーブに記録されていたんだ。遠く離れた所だけど、リディは確かに生きている。」
リディの母親は涙を流しながら言う。
リディの母親
「リディがまだ子供なのも何かきっと事情があるのね…。でもそんなことどうでもいいの。あの子が生きていると聞けただけで…。あなた達本当にありがとう。主人にも知らせてあげなきゃ。」
アルド
「やっぱり、リディに会いたいよな?」
リディの母親
「ええそうね。でも育ての親がいるんでしょう? 私たちはあの子に十分な愛を与えられなかった。代わりにその人たちが与えてくれてるなら、それでいいの。」
アルド
「そうか…。変なこと聞いてすまなかった…。」
リディの母親
「いいのよ気を遣わなくて。あなた達も疲れたでしょう? 少し家で休憩していくといいわ。」
そういうとリディの母親は自宅の中に入っていく。
アルド
「いや、俺たちは…。」
アルドがそう言いかけると、茶色いローブをまとった謎の人物が走ってきてアルドたちにぶつかった。
「バンッ」
アルド
「いたっ…、おいおい気を付けてくれよ…ってあれ? どこに行ったんだ?」
エイミ
「アルド、持っていたオーブは?」
アルド
「あれ?どこにもないぞ。もしかしてあいつが盗んだのか。いったいどこに行ったんだ?」
リィカ
「ワタシ達のコトを付ケ狙ッテイタのでショウカ? あのヒトは、砂漠のホウヘ逃ゲてイッタと思われマス。」
アルド
「エイミ、リィカ、オーブを取り返すぞ!」
アルドたちは砂漠の方へと急いで向かう。
リディの母親
「あれ、あの人たちどこに行ったのかしら?」
砂漠の西側にローブの人物はいた。
アルド
「おいあんた、俺たちが持っていたオーブを盗んだだろう。」
そうアルドが言うと、謎の人物は口を開いた。
謎の人物
「コレハお前タチには、必要ナイモノダ。」
謎の人物はローブを脱ぎ捨てた。その正体は時の塔にいた合成人間だった。
エイミ
「なんであいつがこの時代に? あいつは私たちが倒したはずだわ。」
合成人間
「お前タチの噂は、元の時代でよく聞いてイル。鬼竜を倒したソウダナ。しかしコイツはドウカナ?」
そういうと合成人間は手に持っていたスイッチを押した。スイッチを押したと同時に地面が大きく揺れた。
リィカ
「地下カラ強力なエネルギー反応を確認。来マス!」
大きな揺れとともに出てきたのは、胴体が戦車の形をしていて頭部が竜の頭になっている奇妙な物体であった。
アルド
「なんだ、コイツは?」
合成人間
「コイツは、ワタシがコノ時代にあるプリズマと合成鬼竜ノ技術使って作ッタ、新タナル次元戦艦だ。次元戦車トデモ呼んでオコウカ。ソシテ、このオーブに秘メラレタ時空に干渉スル機能を取リ込メバ…。」
合成人間は奪ったオーブを次元戦車の胴体にはめる。すると戦車の周りにはバリアのようなものが発生した。
次元戦車
「ウォォォォォ。」
合成人間
「行ケ! コイツらを返り討ちにスルノダ。」
アルド
「二人とも構えるんだ。来るぞ。」
次元戦車と戦うアルド達、しかしアルド達の攻撃は全部、周りのバリアのようなものに阻まれて本体には当たらなかった。
エイミ
「どういうこと? 私たちの攻撃が効いてないわ。」
リィカ
「ドウヤラ、周りのバリアが邪魔をシテイルヨウデス。」
アルド
「くっ、どうしたらいいんだ?」
合成人間
「このオーブの仕組みを利用シテ、周りに別の時代カラナル空間をバリアとして呼び出したノダ。お前たちの攻撃は全て当たるワケがナイ。愚かな人間達よ、コレデモ食らうがイイ。」
次元戦車
「ウォォォォ。」
合成人間の合図と同時に次元戦車は強力な風のブレスを吐き、アルドたちは倒れてしまった。
合成人間
「後は、オーブに入ッテイルあのプログラムを抜き出セバ…。」
アルド達はボロボロになりながらも立ち上がろうとする。
アルド
「待てっ…そのオーブは、あの子と両親をつなぐ大事な架け橋なんだ…。」
合成人間
「元の時代で私の邪魔をシタあの小僧ノコトカ。アレガどうなろうト知ッタコトカ。ソレニ、お前達はどうせココで死ぬノダ。ヤレ、次元戦車ヨ。」
アルド
「くそっ、ここまでなのか。」
そうアルドが言ったその時、次元戦車の胴体にはめられていたオーブが青く輝き、そこから大きな時空の穴が出現した。
アルド
「これは…時空の穴。そうか、オーブが!」
合成人間
「馬鹿ナ。ココマデ来テ、マタ邪魔をスルノカ。ウォォォォォ。」
そう言うと次元戦車と共に合成人間は時空の穴に吸い込まれてしまった。
急な出来事にアルド達も戸惑っていた。
リィカ
「次元戦車と合成人間の反応が消失シマシタ。」
エイミ
「私たち助かったのかしら?」
アルド
「でも、あいつらは時空の穴を通して何処か別の時代に行ってしまった。被害が出る前に何とかしないと…。」
エイミは落ちていたオーブを拾って言った。
エイミ
「居場所がわからない以上、今はどうすることもできないわ。あの子の記憶を取り戻すことを優先した方がいいと思う。」
リィカ
「ワタシもエイミさんと同じ意見デス。少年の事にツイテハ大体把握出来たノデ、今こそアノ子に全てを伝エル時ダト思ワレマス。」
アルド
「二人の言う通りだな。ただ、時の忘れ物亭に行く前にリディの母親に言っておきたい事があるんだ。まずはザルボーに戻らないか?」
アルドの言葉に二人は頷いた。どうやらアルドのやりたいことを理解したようだ。
アルド達はザルボーに戻りリディの母親の家に向かった。
リディの母親
「おや、あなた達は。急にいなくなったけど、地震は大丈夫だった?」
アルド
「俺達は大丈夫。そしてリディのことだけど、俺達はこれからあの子に真実を伝えて記憶を取り戻そうと思う。」
リディの母親
「そうなのね。私はリディが無事に記憶を取り戻すことを祈るわ、たとえ私たち夫婦のことは覚えていなくても…。」
アルド
「そのことだけど、あの子は記憶を失ってもあんたの子守唄だけは忘れていなかったんだ。確かにリディと過ごした時間は短かったかもしれない。それでもリディにとっては、かけがえのない時間だったと俺は思う。」
アルドの言葉にエイミとリィカも続く。
エイミ
「それに、あの子はこのオーブから聞こえるあなたの子守唄聴くとすぐに泣き止むと育ての親も言っていたわ。」
リィカ
「記憶を失くしテモ、アノ子の中に確カニ存在シテいるのデス。」
リディの母親
「もしかして、私にそのことを伝えるだけのために戻ってきたの…?」
アルド
「まあ、そんなところかな。それじゃあ、俺たちはあの子のもとへいくよ。」
リディの母親
「ありがとう…。本当にありがとう…。」
アルドはリディの母親に別れを告げ、時の忘れ物亭へと向かった。
最終話「素敵な贈り物」に続く。
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