第3話 本当の家族

パルシファル宮殿を後にしたアルド達。行方不明となったセンドと思しき少年の記憶の鍵は謎のオーブに隠されていると考えた一行は、オーブをさらに解析するためにセバスちゃんのいるAD1100年の曙光都市エルジオンのシータ地区へ向かうのであった。

シータ地区の入口に着くと、アルドはオーブを不思議そうに見つめていた。


リィカ

「アルドさん、ドウカサレマシタカ?」


アルド

「いや、時の塔で合成人間がこのオーブは特別みたいなことを言ってただろ?確かにセンドやあの子の両親にとっては特別な物だけど、合成人間にとってはただの声の入ったオーブでしかないと思うんだ。」


リィカ

「ワタシの計算にヨルト、そのオーブのブラックボックス化サレタ部分に秘密が隠されてイルヨウデス。」


エイミ

「それを解明するためにも、早くセバスちゃんのところへ行きましょう。」


エイミの言葉にアルドとリィカも頷き、セバスちゃんの家に向かう。

そんなアルド達を二人組の男女が付け狙っていた。


「何故あいつらが、あのオーブを持っているんだ。」


「怪しいわね。後を追ってみましょう。」


そう女が言うと二人は気づかれないようにアルド達の後を追った。

セバスちゃんの家に着いたアルド達は事情をセバスちゃんに話し、オーブを渡した。

事情を聞いた彼女は言った。


セバスちゃん

「事情は大体分かったわ。要するに、このオーブの謎を私が解明すれば良いわけでしょ?私もこのオーブには興味があるから解析してみる。」


エイミ

「ありがとう。セバスちゃん。」


アルド、リィカもお礼を言った。


セバスちゃん

「じゃあ、少し時間がかかるから外で待ってて。解析出来たら、この通信装置で知らせるから。」


そう言うとセバスちゃんはアルド達に通信装置を手渡した。


アルド

「分かった。じゃあ、外に出て時間でも潰すか。」


セバスちゃん宅から外に出たアルド達。すると、いきなり例の二人組の男女が話しかけてきた。


「あんた達、オーブを持っていたよな。どこに隠した?」


アルド

「急にどうしたんだ?それにオーブのことを一体どこで…」


「あなた達を尾行させて貰ったの。本来あのオーブはルックの物…。それを持ってるあなた達は盗人だわ。あのオーブを返して!」


リィカ

「落ち着いてクダサイ。あのオーブは盗んだ物ではアリマセン。経緯についてワタシから話サセテクダサイ…」


そう言うとリィカは、時空を超えて来たことは秘密にしながらも、記憶を失った子がいること、その子がオーブを大切にしていたこと、そしてオーブはその子の両親から記憶を取り戻すために託された物であることを話した。しかしリィカの話を女は信じていなかった。


「そんなの信じられないわ。だって、あの子は今、本当の家族と暮らしているはずですもの。」


「ああそうだ。でもひょっとしたら…」


エイミ

「そっちにも事情があるようね。話してくれないかしら?」


「分かった。」


男「俺達は夫婦でこのシータ地区に暮らしている

数年前、家の前に赤ん坊が入った籠が置かれていたんだ。籠にはあんた達の持ってたオーブも一緒にあった。

俺達は捨て子だと思い、放っておく訳にもいかないから家で預かることにした。

両親を探したが、困ったことに、その子にはシチズンナンバーが登録されておらず手がかりがなかった。

そして、その子の居場所を心配した俺達は、育ての親になることを選び、その子にルックと名付けたんだ。」


夫の告白に妻は続いた。


ルックの母

「そして今から数ヶ月前にルックの本当の両親から連絡があったの。

お金に困り、育てることが出来なくて迷惑をかけた。ルックを引き取りたいって。

私は、なんて無責任な親なんだと思ったわ。でもルックにとって本当の親といる方が良いと思って交渉に応じたの。

その両親から、今もルックは元気に暮らしていると聞いているわ。」


アルド

「そしてルックの持っていたオーブを俺達が持っていたことで俺達を疑っているということか…。」


リィカ

「しかし、ルックさんノお父様ニハ、気ガカリなことガあるようデス。」


ルックの父

「ああ。今思い返せば、ルックを両親に会わせた日、彼らはあの子の名前を呼ぶことすらしなかったんだ。なあ、お前もおかしいと思わなかったか?」


夫は妻に問いかける。


ルックの母

「確かにおかしいと思ったわ…。でも…本当の両親じゃないとしたら私達はとんでもないことをしたんじゃないかと思うと怖くて…。」


どうしたらいいか分からない様子の両親にエイミは喝をいれる。


エイミ

「あなた達、その両親の連絡先を知ってるんでしょ! 今からでも遅くない、真実を確かめに行きましょう? ルックのためにも知る必要があると思う。」


エイミの言葉で妻は我に返る。


ルックの母

「ええそうね。あなたの言うとおりだわ。あの子の両親は今、ラウラドームにいると聞いているわ。一緒に行きましょう。」


夫とアルド達は頷き、一同はラウラドームにいくことになった。

ラウラドームについたアルド達はルックの母の案内でルックが住んでいると思われる家に行った。家の前には疑惑の父親がいた。


父親?

「ああ、あなた達は。見知らぬ人達もいますが、今日は一体どんなご用件で?」


ルックの母親

「ルックは元気にしているかしら?今日はあの子に会いに来たの。」


父親?

「突然ですね。あの子は元気ですよ。今は妻と出かけていますから、また後日…」


ルックの父親

「気を遣わなくてもいい。俺達はいくらでもここで待つつもりだ。」


父親?

「人の目もありますし、それは困ります。どうかまた後日…。」


ルックの父親

「俺はあんたのことがもう信用出来ないんだ。ルックをこの目で見るまで帰るわけにはいかない。」


男はうつむき、少し考える。


父親?

「チッ、愚かな夫婦め。そのまま騙されていればいいものを。」


エイミ

「やっぱり、嘘をついていたのね。」


父親?

「ああそうだ。そもそも夫婦も偽りのもの。妻も金で雇われた赤の他人なのさ。知られたからには生かしておけないな。行け!」


男の言葉と共に、警備用のロボットが現れ、アルド達に襲いかかる。


アルド

「ここは俺達に任せろ!」


警備用のロボットを倒し、男を追い詰める。


偽の父親

「つ、強すぎる。」


ルックの母親

「あの子に何をしたの?教えて!」


偽の父親

「子供は俺を雇った合成人間に渡してやったさ。」


アルド

「合成人間だと!?」


ルックの母親

「どうしてそんなひどいことを…。」


偽の父親

「金の為さ。その為なら俺はどんなことでも出来るのさ。結果として金を貰えなかったとしても…。」


エイミ

「報酬を貰えなかったのはどうして?」


偽の父親

「あいつ子供を渡すやいなや、もう用済みだと言って、襲いかかってきやがった。その時…」


男は当時のことを思い返す。子供の受け渡し現場はどうやら最果ての島で、そこにはルックと偽の両親、そして合成人間がいた。


偽の父親

「おい、約束通り子供を連れてきたぞ。」


偽の母親

「報酬を渡してちょうだい。」


合成人間

「先ズハ子供ガ先ダ。」


偽の父親

「クッ、仕方がない。」


偽の母親はルックを合成人間に渡す。


合成人間

「フッ、ドウヤラ報酬に目ガ眩んで状況判断が出来てイナイな、愚カナ人間達ヨ。」


偽の母親

「どういうつもり?」


合成人間

「コウイウコトダ!」


合成人間は持っている斧を振り上げる。


偽の母親

「キャーーーー」


女は斧で切られ死んでしまった。


偽の父親

「クソッ、俺達をだましたな!」


合成人間

「コウナル事も予測出来ナイトハ、本当にドウシヨウモナイ人間ダナ。次ハお前の番ダ。」


合成人間は男との距離を詰めていく。


偽の父親

「ここまでか…。ハハッ、俺は結局何がしたかったのだろうな。」


男が死を覚悟したとき、ルックは泣き始めた。


ルック

「うぁぁぁん。」


すると突然ルックの持っていた玉から時空の穴が生まれた。


合成人間

「シマッタ、アノ小僧…」


合成人間は抵抗するが、穴に吸い込まれていく。


合成人間

「クッ。コノ現象はマズイ…。完全に吸イ込マレル。」


合成人間はなす術もなくルックと共に穴に吸い込まれていった。


男はアルドたちとの会話に戻る。


偽の父親

「そして、あいつは子供と共に綺麗さっぱり消えてしまったというわけさ。ハハッ笑えるだろ?お前達夫婦を騙した俺もまた騙されていて、しかもさらった子供のおかげで助かったんだ。」


男が喋り終わる頃にはEGPDも駆けつけていた。


EGPD

「この辺りで戦闘があったという通報を受けた。事情を話して貰う。」


アルド達はEGPDに事情を話す。


EGPD

「分かった。この男は誘拐及び市街地での戦闘の罪で我々が連行する。」


犯人を連行するEGPD。一方ルックの両親は落ち込んでいた。


ルックの父親

「やっぱりあの夫婦は俺達を騙していたのか…。」


ルックの母親

「私達はなんてことをしてしまったの。本当の家族を見つけられず、さらに

ルックを危険な目に会わせるなんて親失格だわ。そしてあの子はもしかしたら…。」


落ち込む夫婦にアルドは問いかける。


アルド

「なあ、本当の家族ってそんなに大事なことなのか?俺も俺の妹も家族と離れ離れになって、拾ってくれた爺ちゃんが親代わりになってくれたけど、俺にとってはどっちも大切な家族だし、妹もそう思っている。」


エイミもアルドにつづいて落ち込む夫婦を元気づける。


エイミ

「そうよ親失格だなんて、そんなこと言わないで。自分の子供を愛する、それだけで十分立派な親だと私は思うの。それに前に言ったでしょ?私達にはルックのいる場所に心当たりがあるって。」


ルックの母親

「ありがとう。今ならあなた達の言葉信じられる。ルックかもしれない子供の記憶を取り戻そうとしているんでしょ?私達はそれに賭けるわ。」


そう言ってルックの母親はアルド達に一枚の写真を手渡した。


リィカ

「コレハ…?写真ノヨウデスガ。」


ルックの母親

「これは私達があの子と一緒にとった写真です。あの子の記憶を取り戻すために使ってください。」


アルド

「確かに受け取った。俺達も精一杯頑張るよ。」


ちょうどその時、セバスちゃんから連絡が入る。


セバスちゃん

「あんた達、あのオーブのことだけど色々と分かったことがあるわ。早くこっちに来て。」


連絡を受けアルド達はラウラドームから出発する。


アルド

「それじゃあ。俺達は先を急ぐよ。」


ルックの父親

「今日あんた達に出会えて本当に良かった。ありがとう。」


夫婦はアルド達に礼を言い、アルド達はラウラドームからセバスちゃんの家へと向かう。


第4話 「時の遺物」へ続く。

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