第3話 レクライ城の戦争
城門が開き、住民達は荷馬車で避難をしている。
避難をしている住民は落ち着いて同じ方向に移動を行っている事が不思議だった。
普通は身の回りの物だけを持って、歩いてバラバラの方向に向かう事が多かった。
分かっていたとしても練習していたみたいに完璧だった。
6時間後に城門が閉まり、自軍から戦争開始を告げる笛の音が聞こえる。
魔法の進路を開けるように兵が移動しても笛の音は止まらない。
ドークルは白いローブのフードを深く被ったニコラルを見た。
「ニコラル、また人殺しの為に能力を使わせてしまう。
ごめんな」
ニコラルは下を向いたままで笛の音にかき消されそうな声で返す。
「ドークルさん…
僕よりドークルさんの方が辛いのは分かっております。
気にしないでください」
ニコラルはドークルの背中に両手を広げ、両手から白い光がドークルに流れ込んでいる。
ニコラルがドークルに魔力を注ぎこんでいる。
ドークルは右手を前に出し、魔法陣を展開しながら重ねていく。
重なった魔法陣が一つになると形を変えていった。
4つ目の魔法陣が重なり、形を変えた。
魔法陣が一つに集まると城壁と同じ高さの半分位の火球が城門に吸い込まれる様に飛んでいった。
当たった城門とその周辺は崩れ落ち、瓦礫の山と化した。
瓦礫の中や瓦礫の向こう側に人影が見られなかった。
ドークルは流れ作業の様に魔法陣を展開して重ねた。
10分後には次の魔法が発動し、瓦礫の山と城壁内の家々を消し去った。
内城壁の途中の石畳が黒く焦げ、道が出来上がっていた。
聖騎士隊が走って行くのが見える。
自軍からは笛の音が鳴り、前進が始まった。
「ニコラル、魔力は大丈夫かい。
聖騎士様が戻ってくるまで魔力の供給は行わなくてもいいよ。
今の魔力量なら2重魔法陣まで展開できるし、魔法陣を維持するだけでも魔力の消費するから必要ないよ」
ニコラルはフードを被ったままで下を向いていた。
「魔力は問題はありません。
僕はドークルさんの指示に従います」
ドークルは笑っていたが、ニコラルは見ようとしなかった。
聖騎士隊が交渉に来た城主の息子と一緒に戻ってきた。
「城主エルディック・ネールスは敗北の責任を取って自害しました。
自害する時に息子であるエルディック・ネーレラルに今後の交渉を一任しました。
聖騎士様にお話を行いましたが、テルアト国の将軍に交渉を行います。
住民や兵士に危害を加えない事と不当な略奪行為は行わない事を望みます。
条件をのんで頂ければ、レクライ城は全面降伏を行います」
キント将軍は迷いはなかった。
「分かりました。
こちらからの条件は聖騎士団の管理体制を受け入れて下さい。
全ての管理は神国ミルトナが神の名によって行います。
聖騎士隊以外はレクライ城へ入場を行わず、ここに陣を作ります。
安全を規す為に住民でも近づかないで頂きたい。
他に十分な食料を供給して頂きたい。
その配送は聖騎士隊で行ってもらいます」
聖騎士隊が左胸に手を付けて、お辞儀をした。
これは神国流の感謝を示す礼儀作法だった。
「分かりました。」
レクライ城の使者のネーレラルは一礼をした。
「もう一つ、お願いがあります。
“贖罪の水瓶”のスキルを持つ少年に会わせて下さい」
キント将軍の目が怒りに満ちた。
「私は“星の瞳”のスキルがあり、少し先の未来を見る能力があります。
この戦争の結果や少年の事も見えました。
そして、戦争は1か月以内に終わります。」
キント将軍の目は怒りに満ちたままで、ネーレラルを見ている。
「出来る訳がないだろう。
戦争が本当に終わったら、会う機会を与える。
貴様に剣を向ける前に戻れ」
聖騎士はネーレラルの腕を掴むと城に戻って行った。
レアスキル“贖罪の水瓶”で魔法が使えません。 @dailtop
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