第2話 レクライ城の開戦

 ディルデェラ帝国のレクライ城に着いた時には兵が立てこもっていた。

 レクライ城は第三都市と言われる大きさで、経済圏だった。


「ドークル様。

 本陣が出来ましたので、キント将軍がお呼びです」


 レクライ城を見ていた黒鎧に身を包んだ騎士が振り返り、呼びに来た騎士を見た。

 黒鎧の騎士の後ろに白いローブに身を包んだ小さな男の子が後ろに立っている。


「ニコラル、一緒に行こう」


 布で出来た天幕の前にニコラルを置いて、ドークルは中に入った。

 天幕の中に見慣れた顔の6人の騎士が居た。


「ドークル様が来たので、作戦会議を始める。


 今日はここに陣を設けて、明日から戦いを始める。


 これから神国ミルトナの取り決めで聖騎士団からレクライ城に使者を送り、降伏を行うように交渉を行う。

 明日の日の出後に降伏の確認を行い、降伏の意思がない時はドークル様の多重魔法で城門の破壊します。


 再度、聖騎士団が降伏の意思確認を行う。

 その間にドークル様は多重魔法を展開していて下さい」


 光り輝く銀色の鎧を着た聖騎士が手を挙げた。


「魔法の展開は脅迫行為に当たるので、止めて頂きたい」


 不機嫌そうにキント将軍はテーブルを叩いた。


「昔の戦いを忘れた訳ではないだろうな。


 交渉の途中に奇襲をかけられて、敗走を行った事を忘れた訳ではないだろうな。


 この隊は多重魔法を使えるドークル様がいて、ドークル様が亡くなればお互いの国の存亡も危うくなる事を理解しているのか」


 キント将軍の口調が強くなった。

 それに伴い聖騎士も立ち上がろうとテーブルに手を掛けた。


「キント将軍、落ち着きなさい。


 キント将軍がいなければ、ここまでこれなかった。


 この城の攻略は今後の国の存亡に大きな影響がある事は分かっている。

 力が入りすぎると、失敗するぞ」


「申し訳ありません。

 ドークル様に要らぬ気を使わせました」


 ドークルの一言で静寂が戻り、続けて話をした。

 

「聖騎士長のミクルトカ様の言う事も分かるが、戦いを回避する為にも強い脅しは必要だと思う。


 レクライ城は住民も多く、魔法の多発は使者を増やすだけだと分かっている。

 神国の意向で住民に逃げる時間を与え、住民に対して魔法を使用する気もない。


 3年も一緒にいるから分かって頂けると思うが」


 ドークルは聖騎士団長をさとす様に見た。


「ドークル様のお気持ちに感謝します。


 交渉に向かい、全力で降伏させます」


 聖騎士長がそのまま退席すると会議は解散された。



-----

 次の日の朝日が昇ると城門が開き、住民達が逃げたしてきた。


 一緒に白旗を掲げたレクライ城の使者が来た。

 キント将軍と聖騎士長が陣の前に立ち、交渉が始まった。


「レクライ城の城主の息子カラディです。


 城主の伝言でディルデェラ帝国の兵として、降伏は死罪扱いになるのできません。

 自分の命だけで他の者が助かるのであればそうしたいが、戦争もしないで降伏は行えない事を理解して欲しい。

 

 叶うのであれば、住民を避難をさせて欲しい。

 レクライ城の住民は戦争に関係ないし、罪はない。


 住民の避難が完了後に城門を閉めますので、戦争を開始の開始だと思って下さい」


 キント将軍はレクライ城の使者に目を背けず、睨み付けている。


「その条件で問題はない。


 城主に城門を閉めるまで、戦いを行わない事を約束します」



 キント将軍は目を閉じて、静寂が流れた。


「ここからは独り言だと思って欲しい。


 多重魔法をたて続けに2回打ち、外城門と城壁の破壊を行います。

 その後、聖騎士が交渉に行きますのでいい返事をお待ちしております」


 キント将軍は聖騎士長に目線を移し、睨みつけた。


「独り言も父に伝えさせて頂きます」


 レクライ城の使者は城へ戻った。



「全兵に告ぐ。

 

 ドークル様を中心に絶対守備陣形に変更を行う。


 城門が閉じたと同時に多重魔法を2回打ち込むので、魔法の進路を開けた守備陣形に変更する。


 多重魔法を打ち込んだ後に聖騎士が交渉に向かっている間に多重魔法を展開しながら、内城壁の射程距離まで前進を行う」


キント将軍が陣中心に戻ると、ドークルを中心に兵が移動した。

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