少年ふたりのドロドロ共依存ブロマンス

 いわゆる厨二病の吸血鬼の少年と、彼に血を提供する「眷属」であるところの少年の、ラーメンにまつわるちょっとした騒動のお話。
 少年ふたりの友情を描いた現代ファンタジー(ローファンタジー)です。いや単に「友情」と呼ぶのは憚られるというか、正直その一語ではとても収まりきらない、強い結びつきを描いた物語。
 実は作中で起こっている出来事そのものは本当に大したことなく、ただラーメンを食べる食べないで揉めただけのものでしかない〝はず〟なのですけれど。にもかかわらず、それを通じて語られるあれやこれやの、その真剣さというか「濃さ」のようなものがとても胸に響くお話でした。すごい。こんな普通の痴話喧嘩で、ここまで美味しい出汁が取れることってある?
 設定部分の作り込みが楽しいです。「吸血鬼」というある種類型的な、なんならその一語だけで説明を省けてしまう便利な定番の要素を、でもそうは扱わずしっかり組み上げるところ。この吸血鬼としては風変わりな設定そのものが魅力的、というのもあるのですけれど、それ以上にこの設定があってこその「片喰夕日」というキャラクターというか、登場人物の個を構成する土台として作用しているのが最高でした。設定がただの設定に終わらず、物語としてしっかり使い切られているからこその面白み。
 あとはもう、描かれていることそのものが好き。このふたり独特の関係性、特にタグにもある「共依存」の部分。こじれた友情の形という側面もあるにせよ、そもそも抱えた気質や境遇の問題として、お互いに結び付かざるを得なかったところがある。つまり依存関係でありながら、しかし決して無益でも空虚でもなく、どちらかといえば発展的な関係性であるところ。重くてドロドロしたものを感じるのに、基本的には前向きな繋がりとして読めること。この辺、もう本当によかったです。
 ダークファンタジー的な要素を抱えながら、それを丸ごと包み込むかのような形の友情を見せてくれる、とても気持ちの良い物語でした。なんだかんだラーメンだよねってなる感じが好き。