第6話 契約成立

「終わりましたかな?」

 戻ってきた真城さんはさっきまで泣いていた男が片手腕立て伏せをしているのを不思議そうに見ていた。

「私の保護者には力が必要だそうで…」

「ほほう、それは楽しみですな。で、どうですか?」

 私はにやりと笑ってうなずいた。

「学生寮はいい部屋用意してくれません?広くて寝坊しても困らないような近いのがいいです。それから、彼も近くに住まわしてください。」

 真城は笑ってかしこまりましたといった。

 そして彼は私の顔も腕立て伏せと同じ顔で見てきた。

「なにか?」

「いえ…」

 真城は若干いいにくそうな顔をしていたので私がせかした。

「何でも言ってください」

「楽しそうですね」

 後ろに「父親が死んだのに」がついているのがわかった。

考えてみれば、さっきまで泣いていた雷蔵が新しい仕事をもらって張り切っているのよりも、実の親が亡くなった席で涙一つ流さずあげく面白そうな顔をしている私のほうがおかしいといえばおかしかった。

 しかし、私は言った。

「父が亡くなったことにはぴんと来ませんが、面白そうなことが舞い込んできたのはかなりぴんと来ているんですよ」

 私は真城が掲示したこの案の乗ることが、ある種の賭けのような感じがしていた。

 何かが待ち受けている…そんな気がしてならなかった。

 これは勘だ。

 真城はそんな私を見て深々お辞儀をし、手続きの説明をする日程を話すとその場を去ろうとした。

 しかし、ふと止まって振り返った。

「昔、誠人様から聞いたことがあります。誠人様は可愛らしく花の名前をつけようとし、貴女のお母様は彼の争い嫌いのところを見て、それが反面教師となって強く育つようにと考えて、両方合わせた名前をつけたそうなんです」

 そして、彼はまた歩き出した。

「強く生きてください、ショウブさん」

 私の名前は坂元、いや才谷菖蒲。

 父親の願いは届かず、可愛さ0に育った十六歳だった。

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今日からおっさんボディーガードつきで学校に住みます。 粋田 椿 monger171 @gonzales55

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