最終話 持続的で憂鬱なルーティーン
怖い。
病院を抜け出したことを咎められるのがじゃなくて、もしそうだったらと思うと、怖くて仕方がない。
息が上がってるのは、きっと車椅子を動かすのに疲れただけ。そう言い聞かせるのが精一杯のおまじない。
でも、ついて来たのはいいとして、この身体で何が出来る?
そもそも、『秋人』とは秋君のことっていう証拠もない。
気持ちが先行して、結局、病んでしまう。いつだってそうだ。小説を書いて、秋君に読んでもらっても、思いつきで書いただけだから、ほとんどつまんないものになってしまう。
でも今は自己嫌悪で、自分の道のりを見失う暇はない。
ボクの進む先には、きっと秋君が待っている。もう青髪に染めたりして、独りぼっちなのを言い訳したり誤魔化したりする必要なんてない。
それに、ボクは多くの時間を寝て過ごしちゃった。だから、無駄に病んでるなんて秋君に怒られちゃうに違いないよね。
*****
「ただいま~」
いつから私は看護師から介護士になったのだろう。
今まで
でも、いざ目を醒ますと、自分の気分でリハビリするし、車椅子に乗せたり何なりって、これじゃあ、私の方がリハビリしてる感じ。
足もパンパンだし、久々にお酒でも飲もうかな。
ホント、私が養うのは、秋人だけになればいいのに。
そうじゃなきゃ自分のお世話がおろそかになるわ。
「お待たせ、今日も元気にしてた?」
「うん」
そう、私の周りには元気な人が少なすぎる。医者も他の看護師も患者と変わらず、疲弊に日々苦しんでいる。
片想いの
でももう、そんな滅私奉公、時代遅れ。昭和生まれの独身女である私が彼の代わりにその役を背負えばいい。
<ピンポーン>
私、何か間違った事考えてる?
「秋君を、ボクに返して」
「はぁ? てか、何でここに」
「秋君を返してください!」
これだから患者とは仲良くなれない。すぐに悲劇のヒロインになった気なのか、ヒステリックになる。やっぱり私には向いてなかったのかしら。
「うあああああああ!!!」
「アンタが叫ぶから! 大丈夫だからね、ごめんね」
「あ、秋君………?」
秋人はもう、この子の知ってる『秋君』なんかじゃない。
私がいないと生きていけない存在であり、それは誇張でも願望でも何でもない。
「怖くないよ。私がずっと一緒にいるから。泣くことなんてないよ」
「ダマレ」
「ちょっと、今は静かにしt……!?」
*****
ボクもそろそろ限界かも…………
でも、怯えて震えてる秋君を放って倒れるなんて、ナースさんを刺した意味がない。
ボクが秋君のそばにいるんだ。
もうボクは病んでないんだもん、今度はボクの番だよね。
その日ボクは、
持続的なメンヘラ供給記 綾波 宗水 @Ayanami4869
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