Arco2n2o2

冬迷硝子

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窒素78%、

酸素21%、

アルゴン1%、

二酸化炭素0.03%

水分その他。


あー汚い汚い。

やだやだ。

窓全開したって変わりゃしない。


「はぁ…」


思わず吐いてしまった。

汚いものをさらに吸ってしまった。


あっーもうっ!


自分の間抜けさに腹が立つ。

開けていても寒いだけだから、部屋の四隅にある全ての換気扇だけを回した。

窓を閉じる。

風が止む。

花粉が止む代わりに嫌な空気だけが留まる。

換気扇なんて使えたものじゃない。

あんなもの汚いものを送る扇風機だ。

この部屋ももう潮時かな…。

割りと気に入ってたんだけど。

耐震構造で家具の足には粘着性の高い、『高高濃度粘着シート』が付いている。

今までその効果を現した例はない。

地震雷火事親父。

それらの類いは、ここには一度も来たことがない。

他のうちは毎日のように何かしら来てるみたい。

でもここには来ない。

此所は、私の家

自分の部屋。

私しか住んでいない。

だだ広い豪邸でもなくトタン屋根の貧乏住宅でもない。

高層マンションでもなく平屋でもない。

リビングダイニングキッチン

それに2つの部屋

ユニットバス。

これで全部だ。

身の回りの世話をしてくれるという、執事、メイド、召し使い、ヒモ。

どれも居ない。

ここには私1人しか居ない。


あっー!もうっ…

なんでこうも汚いのかしら


塵埃1つとしてないはずなのに汚い。

空気が汚い。

こればかりは私自身が作り出したもの。

だから仕方ない。

仕方ないはずなんだけど。

汚い。

汚らわしい。

気持ち悪い。

吐いてしまいそうだ。

でも胃の中のものはさっき全部吐き出した。

だからもう胃液しか出てこない。

いっそ胃自体が出てくれないかしら

肺も腸も全て吐き出して、

私を殺して欲しい。

でも吐いたのは、胃液ではなかった。


血。


「まぁでも血液というのも悪くないわね」


私はそれでもその部屋に居続ける。

私自身の身体を見下ろして


※本作は自殺や自傷行為を助長または教唆きょうさものでありません。

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