第2話 その後世界は‥‥
魔王キンキキと勇者ルテーシアの世界の命運を賭けた戦いによって、勇者ルテーシアは相打ちという形で魔王キンキキを討伐することに成功する。
しかし魔王キンキキは死の間際に最後の力を振り絞り、自身の影と言われるキンキキッズを世界中にばら撒き拡散、炎上させた。
‥‥それから三年後の話である。
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「キンキキッズの
大陸の北にある都の酒場での話である。
「ああ、なんでも到達不能領域付近にいた個体らしく、最キンッ‥‥最近まで被害も出ていなかったから、
「はいはいビールですねー!」
「‥‥飲みすぎだろ」
世界中に拡散したキンキキッズは本来であれば魔王を守護する兵隊のようなものであり、人類が住むには劣悪な環境と言われる魔王城付近に生息していたモンスターだったため、環境に対しての適応能力が高く、そして人々が生活している地域周辺に生息しているモンスターよりも遥かに強力だった。
最初の内は小さな村や町は壊滅的な被害を被ったが、世界各地には以前勇者と旅をしていた者や、魔王討伐から帰った吟遊詩人のボギール、治癒師ファラの活躍もあって、ここ数年でキンキキッズは絶滅寸前のところまできており、世界は平和になった‥‥と思い始めた矢先のことである。
「話によると、その
「‥‥とりあえずキンキンしてることしかわかんねえな」
「実際は戦ってみてのお楽しみってことだろ、とりあえず情報収集も兼ねた先発隊はキンキンしながら全滅、事態を重く見た王国は元勇者パーティ複数名を招集して討伐に向かわせたらしい」
「マジかよ、この情報量の少なさと擬音表現だけで元勇者パーティが招集に応じるの凄くね?」
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「へクチッ!」
「風邪かい?ファラ」
「ん、なんだろ?どっかで誰かが私たちの噂でもしてるんじゃないかしら」
「僕らの噂をしている人なんていくらでもいるだろうさ」
吟遊詩人のボギールはケラケラと笑う。
「はあ、どっかの吟遊詩人が世界の命運を賭けた戦いをふざけた描写で書いた本をばら撒いたせいで、世界中で笑われてんじゃないかしら」
「僕は真面目に書いたさー」
「どこがよ?真面目が行方不明な印象しかないわ」
「‥‥話はそこまでだお二人さん、そろそろ例の
二人の会話を制止したのは断剣のレスウォーニ。
身の丈程もある両手斧で、両手剣の使い手を剣ごと叩き斬った逸話からその二つ名がついた戦士である。
「こっちには僕を含め
アーティファクトとは遠い昔神々が作ったとされる武具を指し、3年前の戦いでは勇者が使っていた光の剣や魔王が使っていた闇の剣がそれにあたる。
通常の剣が人を斬るものだとすれば、アーティファクトの剣は城や山を斬るといった規格外の力を秘めており、3年前の戦いでは魔王軍が戦争を仕掛けた要因にもなった神々の遺物である。
「いやいやボギール殿もお人が悪い、拙者のアーティファクトは独特ゆえ余り期待はなされるな」
長髪を後ろで結い、独特の身なりなのは極東の異国出身のキリサメだ。
今でこそ穏やかな男ではあるが、昔キキン(飢饉)と内乱が続き、雨も降らなかった時は敵対した人間の血で喉を潤し、肉で腹を満たしたという逸話があるとんでもない男だ。
「えー、そういうこと言われると胃に穴があくまでプレッシャーかけたくなるなぁ」
「ドSか」
「ドSでござるな」
「遊ぶなおま‥」
レスウォーニが言い終えるかどうかというところで、四人は自分たちに対して尋常では殺気が飛ばされているのことに気が付く。
「おいおい‥‥」
「冗談でしょ‥‥」
「俺らより広範囲の索敵にこの殺気‥‥魔王クラスかよ」
その敵は先ほどまで雲で薄暗くなっていた辺り一帯を自身から溢れ出る金色の光で照らしていた。
キリサメはその敵から目をそらさずにアイテムバッグから鑑定石といわれる石をおそるおそる取り出し、震える手でその魔物を鑑定した。
「あ、ああ‥‥」
「どうしたの?キリサメ!?」
キリサメはその魔物のステータスに絶望していた。
〇〇〇
〖ヒカキン〗 魔王種
Lv :200
HP :8830000(2021年1月18日現在)
MP :3930000(2021年1月18日現在)
攻撃力:5270
防御力:7200
魔力:測定不能
素早さ:8888
〇〇〇
「あの魔物の名はヒカキン。 レベルは200、HPは‥‥883万でござる」
「883万!?、原初の魔王の903万(2021年1月18日現在)に次ぐステータスなんて、冗談じゃないわ!」
そうファラが叫んだ瞬間、ヒカキンは500mはあろうかという間合いを一瞬で詰めてきた。
「クッ!」
ボギールはファラに攻撃をしようとするヒカキンに対して剣を振るう。
「ブンブン♪」
しかしヒカキンはこれを難なくと回避し、カウンターでボギールの鳩尾目掛けて打撃を放つ。
ボギールは打撃が鳩尾に入る前に剣で受けようとするも、その打撃はボギールの剣を砕き、鳩尾を貫き、ボギールの身体を吹き飛ばした。
「ぐはッ!」
「ボギール!!」
ファラが叫んだ。
そしてキリサメはこの間、ヒカキンから目を離さず自身のアーティファクトを解放しようとする。
ヒカキンはキリサメのアーティファクト解放による魔力の増大と解放までのタイムラグを感じ取ったのか、一瞬で攻撃の優先順位を治癒師ファラからキリサメに切り替え攻撃を仕掛けた。
(クッ! スピードも判断も早いでござるなッ!)
ボギールに致命傷を負わせた打撃がキリサメに襲い掛かろうとするところで。
「俺を忘れてるんじゃないか!?」
レスウォーニの両手斧による重い斬撃がヒカキンを捉えた。
「セェイ!」
キィン!
それがどの程度のダメージを与えているかはわからない。
しかし、レスウォーニの斬撃は一撃では終わらない。
「セイセイセイ!」
キンキンキン!
「セェエエエエエエイ!」
キィイイイイイイイン!
澄んだ音があたりに響いた。
そしてその音が木霊して聞こえなくなった頃には。
(ちく‥‥しょう‥‥)
レスウォーニ=グランツの心音は止まっていた。
通常種のキンキキッズですら、攻撃時のキン!という音で頭が割れるほど頭の中がキンキンして絶命する者もいるのだ。 その
「鳴り響け‥‥キンキン丸」
キン色に輝く刀、キリサメのアーティファクトが解放される。
<<奥義 三連閃>>
そして次の瞬間、キリサメが抜刀術の構えから消えたと思った時にはヒカキンは宙を舞っていた。
遅れて斬撃を当てた時に鳴ったと思われる音が周囲に響く。
「!?」
ヒカキンは何故自分が宙を舞っているのか、そして何故キリサメがキンキンして死なないのかがわからない顔をしている。
「キンキン丸は音のアーティファクトでござる、其方のキンキンに対して同質のキンキンを当ててキンキンすればキンキンキンでござろう?」
「!?」
ヒカキンにはわからない。
「産声を上げろ‥‥キン太郎」
ヒカキンの落下するであろう地点には既にボギールが立っており、キン色に輝く斧のアーティファクトの解放を終えていた。
ボギールの治癒を終えたファラはというと、もうどこから突っ込んだらいいかわからないという顔をしている。
「‥‥そろそろこの物語にも、幕を下ろそうか」
ボギールが握るキン太郎にも力が入る。
キリサメも追撃するといわんばかりに抜刀術の構えをとる。
「やるよ!」
「御意!」
「「うおおおおおおおおおお!!」」
キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!
ファイナルキンキンファンタジー 千路理 @kuroot2018
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