ファイナルキンキンファンタジー

千路理

第1話 全ての始まり

○○○


 魔王城、玉座の間。

 そこでは勇者と魔王が世界の命運をかけ、白剣と黒剣が、白と黒が剣閃を描きながら激しくぶつかり合う。


 「うおおおおおおお!」

 キンキンキンキンキンキンキンキン!

 「らあああああああ!」

 キンキンキンキンキンキンキンキン!

 「まだだぁ!」

 キンキンキンキンキンキンキンキン!


 負けた方が死ぬのではない。

 負けた方の世界が滅びるのだ。

 

 「凄いな……」


 その戦いの様子を、離れた場所から書き留めていた吟遊詩人のボギールはそう呟いた。


 「ホントよ、もうアタシ達がどうこうできるレベルの戦いじゃないわ」


 治癒師ファラも魔力が尽きてしまい、ボギールの横でその戦いを見る他なかった。


 「いやそうじゃなくてさ」

 「え?」

 「この戦いを後世に語り継ごうと、今書き留めているんだけど、世界の命運を賭けた最後の戦いなのに、剣と剣がぶつかるのをキンキンって擬音だけで表現すると、ビックリするくらいこの戦いの凄さが伝わってこないんだ」

 「……何言ってんのよアンタ」


 そうこうしてる内に勇者の背後から魔物が襲いかかろうとしていた。


 「あれは……」

 「キンキキッズッ!まだいたの!?」


 キンキキッズとは魔王から生み出された魔物だ。

 魔王の影とも言われる小型の悪魔で、体は金属質で異常に硬く、物理攻撃をしてもダメージが通りにくい上、物理攻撃が当たった瞬間のキン!という高い音がパーティを苦しめる。そしてキンキキッズ自身はその音に抵抗がないことが、また厄介だった。


 ボギールはアイテムバックに手を伸ばし、一本の剣を抜いた。


 「アンタ、楽器しか使えないんじゃないの?」

 「黙ってたけど、勇者に剣を教えたのは僕なんだ。魔力が残ってれば楽器を使った方が強いけど、あいつら程度なら剣で倒せる」


 そういって勇者の背後から忍び寄ろうとするキンキキッズを、ボギールは迎撃した。


 キン!


 ボギールが勇者の背後から近づくキンキキッズに攻撃をしたことによって、勇者は自分の周囲の状況を正確に把握する。


 (ボギール!?すまない!助かった!)


 「ふん、余所見をしてる場合か?しぶとい奴らよ……我が剣の前に沈め」

 「させるかッ!俺はみんなを守る!」


 空間内の魔力が凄まじい勢いで膨らみ、そしてそれが剣に凝縮されていく。


 「……そろそろこの物語もおしまいにしようか、キンキキッズ」


 勇者の背後でボギールも握る剣に力を込めた。


 「うおおおおおおああ!」

 「がああああああああ!」

 

 キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン!

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