第7話 収束?
伝来の衝撃は、ホテルのスイートルームを全て破壊した。リンランは生きてはいたものの禁忌のスティマの影響で余命数週間だという。
俺は、ホテルに何台もの消防車・救急車・パトカーが駆けつける中、綾香のミニバンの中にいた。スーツは”伝来”に耐えられなかったようで、ところどころ壊れていた。
『なぁ……なんで生きてるんじゃ?』
ルルガ(精神)が言う。
『はぁ! ワタクシが生きててよかったじゃない?! 来人が罪悪感で苦しまずに済むでしょ!!!』
サイハ(精神)が答える。
サイハ(偽物)の身体は破片も残っていない。伝来はどうやら諸刃の剣のようで、一撃必殺のようだった。その破壊力はすさまじいが、俺の身体の負担が半端なかった……今日はこれ以上身体を動かすことができないだろう。
だが、なぜサイハの精神は残ったのだろうか?
遠くから綾香が近づいてくる。
「鳴神さん……いくつか報告があるわ」
その表情は深刻だ。
「まず、上層部の許可なく侵入したことを含む今回の騒動の責任は問わないそうよ……あれば全て第14次元ヨハの責任ということになったわ」
「……それはよかった」
俺は安堵する。
「サイハさんの精神については、まだ調査中。ただ身体がない以上、鳴神さんの身体に寄り付くしかないでしょうね」
「……それは合意する」
『来人……』
サイハ(精神)は嬉しそうだ。俺が拒否して、彼女の精神を消滅させるわけにはいかないからな。
「あと、もう一つ、今回の騒動でサイハさんを消滅させたせいで、ルルガの精神が無期限で戻せなくなったわ」
「「「――なっ!」」」
これには全員が驚いた。
綾香が続けて話す。
「これは、第77次元ゼクスの意思でもあるわ。この世界の人間に能力を貸し与え、メデェアムの交渉しようとしてた要人を消滅させ、その交易会議は白紙になってしまった……ヨハの責任とはいえ、全て免罪とはいえないって……。ゼクスに戻ることは出来ないけど、この世界でルルガさんの身体と精神を預かることになったわ。もちろん、鳴神さんの合意の上だけど」
『まぁ……仕方ないのぉ、それにこの世界の方が居心地いいし。まぁ、そう思っての処分なんじゃろう』
今回、ルルガ(精神)は転身庁上層部の依頼で参加しただけだが……ルルガ(精神)自身納得しているようだった。なんだか申し訳ない。
ルルガの精神を俺の身体に留めるためには、俺の合意がないと不可能だろう……それは問題ない。
「……それも合意する」
その瞬間、俺のスティマが光る。これまで綾香が話した内容が合意に達したということだ。
ルルガ(精神)は何も話さなかったが、満足そうな感覚がした。
「――ということで、まだまだ分からないことも多いし。鳴神さんは複合寄付者として、転身庁の極秘任務にあったって頂くことになりましたのでよろしく!」
「「「は?」」」
そういうと、綾香はスタスタとミニバンから離れていった。
……しまった。これが上層部の手だったか……。
受難の日々は続く。
(完) to be continued?
【エピソード0】鳴神寄付者!!!!!(なりかみドナー!!!!!) ~天使が俺に、魔人が俺に、そして俺は俺になる~ ゆずり @Inubanana
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