どこまでもピュアで真っ直ぐな、青春のひと幕

 引っ込み思案な高校生の少女・水瀬さんと、クラスのムードメーカー的存在である男子・青木くんが出会い、互いに惹かれあっていくお話。
 小細工なし、ど直球の青春恋愛ものです。思春期の少女の視点から、恋の不安やドキドキ感をそのまま活写した物語。それ以外には説明のしようがないというか、そんな野暮はしたくないような感じ。本当に、ただただ恋愛感情だけに特化した、非常に潔くまた気持ちのいい作品です。
 あまりにシンプルすぎて他に言えることがないのですけれど、それでも一点特徴を挙げるとすれば、舞台が完全に学校にのみ固定されているところが印象的でした。家庭や外の世界というものがなく、その代わりに教室や屋上、果ては体育祭といったイベントなど、学校における様々な場所や時が出てくること。
 クラスメイトという関係性、つまりふたりの接点が学校にあるから、というのももちろんあるのですけれど。しかしそれ以上に、人生において学校の存在がかなりの割合を占める、この年代ならではの世界そのものを描いているように感じました。
 また、個人的な感想ではありますけれど、卒業して久しい身の上としては、あの頃の追体験のようなノスタルジックな感覚もあったり。とまれ、何もかもが不安だった幼く不器用な恋の、その手触りをそのまま描き出したかのような作品でした。