私の知ってるあの人は
七瀬モカᕱ⑅ᕱ
春
私の知ってるあの人は、いつも笑顔でみんなのムードメーカー的な存在。
私がその人に出会ったのは、高校二年生の春。クラス替えの時だった。
仲のいい子のほとんどとクラスが離れてしまってなかなかクラスに馴染めなかった私を、輪の中に入れてくれたのもあの人だった。
✱✱✱
「....い、おーい!」
「うわ、!はい!」
大きな声に驚いて顔を上げると、目の前に一人の男の子が立っていた。
「うわ、すげぇでかい声出るじゃん.....。そんな隅っこに居ないでさ....こっち来なよ。」
男の子は笑顔で、輪の中を指さした。
「え....。」
「あ、そういえば名前は?さっきずっと【おーい】って呼びかけてたから......。ごめんな。」
さっきまでニコニコの笑顔だった男の子は、急に眉毛を下げて困り顔になった。
「水瀬、葵っていいます......。」
「水瀬な、おっけー!俺は青木遥!今日からよろしく!」
男の子.....青木くんはそう言うと、片手を私の前に持ってきた。多分、握手をしよう。ということだろう。
「うん、よろしく.....。」
これが、青木くんと私の....初めましてだった。
✱✱✱
それからはなかなか話せる機会がなかった。
・・・というより、私がその機会を【潰した】という方が正しいのかもしれない。
私の席はクラスの一番後ろで、 青木くんの席は.....真ん中に近い方の席だ。
休み時間はいつも人に囲まれている青木くん。たくさんの人に囲まれて、楽しそうな笑顔が人と人の間から見えている。
私にもあの人達の輪の中に入る勇気があれば、もっと楽しくなるはずなのに。
けれど私は、一番初めの一歩がいつまでたっても踏み出せないままでいる。
そして今日もまた、何もできないまま休み時間が終わってしまう。
今日もあっという間に午前中の授業が終わって、お昼の時間になった。
私はいつも一人でお昼ご飯を食べている。
「ラッキー、今日は誰もいないや。」
普段から人の少ない屋上。今日は私一人だけ。ラッキーなんて言いつつ、本当は少し寂しかったりするけれど輪の中に入れない自分も悪いんだから【仕方ない】といつも割り切っている。
今日も一人でお昼ご飯。
お弁当開けて、食べ始めようとした時........
「よっ!」
大きな声に驚いて振り返ると、そこにはお弁当を持った青木くんの姿があった。
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