旅の中間地点
数年間、レベッカとサーニャはドラゴン討伐を続けた。しかしレベッカの目的のアイテムは未だにドロップせず全てレアアイテムばっかりだった。
いつしかサーニャは短剣を使いこなすようになりレベッカのサポート役として優秀になり一部では有名な冒険者となっていったがそれはごく一部、今はもう数少ない冒険者の世界。ドラゴンも日に日に減っていく、モンスターの驚異性も減っていった。
「ふぅ……これで通算六十三体目」
大剣をドラゴンの頭部から引き抜くレベッカ。
「お疲れレベッカ」
「サーニャもお疲れ、ナイスアシストだったよ」
軽さを重視した装備のサーニャがレベッカに水を渡す。それを受け取ったレベッカはドラゴンのドロップアイテムを確認する。
「またレアね。なんか逆に『ドロップ率100%』が邪魔してる気がするんだけど」
「そうは言っても何回か外して倒したけど何にもドロップしなかったじゃない」
「はいはい、やっぱ私には運がないってことね」
ハイトが最後に残したアミュレットを今すぐに投げ捨てようかと思ったレベッカだが外したら外したで次はアイテムが中々ドロップしないという運が全くない状態になるため仕方なく装備するしかなかった。
「しかしそろそろドラゴンのドロップアイテムの相場は無に等しいでしょ」
「そうだね。今は時代の変化と共に素材を取らなくても代替品が多くなって高品質の物も製造可能からかモンスターのアイテムの価値はほぼ無の状態よ」
「昔なら高値で売れたものが今ではゴミ屑なのね」
「一部のコレクターでは売れるけどそのコレクターを見つけるのも一苦労だからね」
「ホントよ全く」
「私達の装備も調達どころか製造も難しくなってますからそっちは逆に高騰してますから金銭面がキツくなる一方」
「まぁいいわ、私達がやるべきことはただひとつ。進むことだから」
「そうだねレベッカ」
レベッカとサーニャは同時に笑う。
「ああそれとレベッカ。私装備そろそろ変えたいんだけど」
「うえっ!?サーニャあんたその装備いくらしたか分かってるの?それに最近よ、変えたの」
「だって胸が……」
「は?」
「胸が」
「黙ってその装備のままでいろ」
「もう、レベッカのいじわる」
「金を削ぐ前にまずその肉を削げ」
「酷い」
軽装備のサーニャだがこの数年間で意外にもとある一部が育ち対してレベッカは変わらない成長だった。そんな二人は今でも変わらずに旅を続ける。レベッカは『ドロップ率100%の冒険者』として名を連ねるがそれはたったの一瞬、しかしレベッカ本人にはどうでもいいこと、『ドロップ率100%』は目的のアイテムが出れば関係のないこと、それを目指すだけ、サーニャは帰る場所はあるが二度と戻らない。それは自身で決めたこと、後悔はない。だが今でも姉からの手紙は読むことはない。理由はそれを読んでしまったらサーニャの旅を終わらせてしまうかもしれない、だからこそ読まない。
二人は明確な目的はあるがその目的が達成することはいつになるか分からない。理由はひとつ『確定で辿り着く』という保証がない。
それでも二人は旅を続ける。
ドロップ率100%の冒険者 水無月 深夜 @Minazuki1379
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