仲良し
数日歩き休み続け目的地近くまでたどり着きそこでテントを張りテントの前で座り込むレベッカとサーニャ。
「サーニャはどうするの?」
「ん?どうするって何が?」
「この先のことよ、サリエが言っていた未来の話」
「う〜ん。私はよく分からないなぁ」
「というと?」
「レベッカ達の話を聞いていて思ったのはこの先の話をしても意味がないと思った」
「意味がないって?」
「だってさぁどうせ今を生きてるんだから今を楽しめればいいんじゃないかって」
「ふ〜ん、たしかにそうね」
「レベッカは?」
「私はそうね、ハイトの言葉でサリエが言ったことを理解出来たよ」
「意外。あんなに自分自身の事しか考えてなかったレベッカが変わるなんて」
「何勘違いしてるのよ、確かに理解したけど全部その通りには動かないわ、私は私のやり方でこの先進んでいく」
「じゃあ私もついて行っていい?」
「もちろん、私とサーニャの仲でしょ」
「ありがとうレベッカ」
微笑むサーニャにレベッカも連れて微笑む。そしてサーニャはその場に立ち上がる。
「あ、そうだサリエからレベッカに伝言」
「伝言?」
「そう、最後の伝言」
レベッカはサリエからの最後の伝言と聞いて息を飲み先程まで微笑んでいた表情から緊張した面持ちになる。その最後という意味はレベッカからしたら二つの意味合いがあった。ひとつは仲間として、もうひとつは友人としての。仲間としての伝言であるならばまた再会を望める伝言であり希望を持つ伝言だったがもうひとつの友人としての伝言はレベッカとサリエの間で決めていた伝言でもあった。
「レベッカ大丈夫?」
「え、ええ……それは仲間としての伝言それとも友人としての伝言?」
「友人としての伝言です」
「ああそうなのね、分かったわ」
友人としての伝言。それは魔王討伐軍時代に唯一の戦友にして友人であった二人だけで決めた伝言。それはどちらか一方が友人としての言葉を残した場合は二度と会うことがないことを意味する伝言。
これは片方どちらかが魔王討伐を失敗した場合の連絡、遺言でもあった。それをサーニャの口から友人としての伝言と聞いてレベッカはもう二度とサリエと会うことがないことを察した。
「それでは冒険者協会中央連合最高権限主サーニャ・アルマスがサリエ・アルマスから承った最後の伝言を冒険者協会元中央連合魔王討伐軍戦闘総指揮官レベッカ・ナハトロに伝えます」
「堅苦しいわね、普通でいいわよ」
「一応規約ですので、では伝えます」
「『レベッカ。ありがとう』です」
「……え?終わり?」
「はい。終わりです」
まさかの一言だけに悲しむを通り越して言葉を失うレベッカ。
「え〜、いやなんかその〜……あっけな、もう少しこうなんかさぁ、ほら長々とないわけ?」
「最後にはレベッカにはこれぐらいがいいと付け足しで言ってました」
「ああなるほどね、たしかにちょうどいいわ。はぁこれでサリエとお別れか〜」
「レベッカはあのまま別れてよかったの?」
サーニャはレベッカの隣に座り直す。
「ん〜まあ正直色々と言い直したいことはあるよ、けど今更また会って色々と言うよりここでサッパリと別れた方がいいのかなって思ってる」
「じゃあ私が代わりに伝えようか?」
「サーニャは姉が嫌いでしょ、それに帰らない気だよね」
「まぁね。けど同時に好きだよ」
「同時に好き?どうして?」
「お姉様は私の為に冒険者になった。私を戦わせない為に、それがカッコよくて憧れだった」
「そうなのね。でもよく最後サーニャを見届けたわね。私に任せるなんて分からないわよ」
「お姉様は言っていました。レベッカは言葉や態度は他の人より酷いが最も信頼出来る人だって」
「凄い言われようね、まあ嬉しいけど」
「私は帰りたいけど帰らないわ、レベッカの隣にいる」
「いいの?私はもう止まらないわよ、目的のアイテムが手に入ったら一度故郷に戻ってそしたら旅は続ける、この足が止まった所が私の死地で私の最終地点」
「何言ってるの、私はレベッカの専属の冒険者協会直属の人間よ。貴重どころかそれこそレアアイテムに等しい人材よ」
「そうだったわね、ありがとうサーニャ」
「私こそ、ありがとうレベッカ」
レベッカとサーニャは共に笑う。そして少し他愛ない会話をしたのち先にレベッカはテントの中で眠る。
サーニャは外で一人夜空を眺めながら手紙を見つめる。
「見たくないなぁ……」
この手紙はサリエの本心が書いてあるだろう、しかしそれは励ましかそれとも違う何かなのか怖くて見れなかった。勢いで見てしまえば大丈夫だろうがそれこそ後が怖くて見れなく開けることが出来なかった。
サーニャは少し手紙とにらめっこしたあとやはり開けるのが怖くなってしまいテントの中に入って眠った。
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