聖女と大魔王の関係は爛れていた!
黒銘菓(クロメイカ/kuromeika)
第1話
聖女と大魔王の関係は爛れていた!
人と魔族が相争い幾星霜。
人の代表の聖女と魔族の代表大魔王は死闘を繰り広げ、最終的には両者の一騎討ちという形で決着を着けることが決まった。
その間、両軍は停戦を結び、一時的に和解。
そして、聖女と大魔王は両者しか中に入れず、中の様子さえ窺う事が出来ない不可侵結界『雌雄結界』に入り、勝負をする事になった。
「大魔王ったら……そんなに激しくしないでぇ。」
焦った顔で懇願する聖女。
「くふふふふ。許しませんよ。」
そんな聖女を他所に、大魔王の細く、長い指は動きを止めない。
「あ、や、ちょっと、もう……」
最早聖女に為す術は無い。
「終わりに、しましょう。」
大魔王の指先が動く。
「あっ!」
聖女は糸の切れた人形の様に体をガックリとさせた。
数時間に及ぶ接戦、激戦の末、人類の希望、最後の砦たる聖女が屈した。
大魔王の勝利だ。
「では、魔王軍全軍で突撃。人は蹂躙し尽くす。
ふふ、ふははははは、ははははは!
はーい、また僕の勝ちー。」
盤上の駒を指先でつまみ上げて聖女の目の前でヒラヒラさせる。
「大魔王強過ぎぃ。
四天王落ちで聖女と勇者と賢者相手にノーダメで勝つってどゆこと?」
こちらは卓に突っ伏して意気消沈している。
もう一度言おう。聖女と大魔王の関係は爛れていた!
大魔王と聖女は今、最終決戦の場で、二人仲良くゲームして駄弁っていた!
この醜態に至る経緯は決戦開始直後から始まった。
「聖女さん、大魔王より貴女に提案があります。」
余裕の笑みを浮かべた大魔王が結界に入って早々にそう言った。
「提案?一体何を企んでるの?」
当然聖女は警戒する…が、次の言葉で彼女は大魔王の考えが全く解らなくなった。
「ゲームをしましょう。
何を賭ける訳でもなく、単に遊びましょう。」
そう言いつつ遊戯盤を何処からともなく取り出した。
「……は?」
「外は停戦状態。私は争う気は無い。
しかし、このまま出て和解…ともいかない。
だから私は時間が解決する事に賭ける。
停戦中に互いが互いを理解し、解り合えると信じる!」
「…良いでしょう。その話、受けましょう。」
聖女は予想外に即決だった。
そう言う事になった。
(このまま戦わずに戦争終わります様に!)
実は戦闘力が皆無な押し付けられ大魔王は願った。
(このままゲームして駄弁って堕落出来ます様に!)
実は怠け者で渋々聖女になった聖女は祈った。
互いに企みつつ、世界平和は迫る。
結論:聖女と大魔王の関係は爛れていた!
聖女と大魔王の関係は爛れていた! 黒銘菓(クロメイカ/kuromeika) @kuromeika
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