5
雨天は太陽を見ると陽愛の社に入り様子をこっそりと窺う。
陽愛神社の前にはあの子供が飛び上がって喜ぶ姿と人々の笑顔があふれている。
――人の思いは神の力となる。陽愛も元気になっただろうか?
社を覗き込んでいる雨天の後ろから陽愛に声を掛けられる。
「おせっかいね雨天。珍しく仕事しすぎ……ジメジメしてカビが生えそうよ」
笑顔の陽愛の顔には黒いシミもなく、いつもの美しい姿に戻っていた。雨天もカラカラと笑っていつもの調子で言葉を返す。
「お前のカビの生えたブサイクな顔は見るに耐えないからな」
「減らず口ね……でも、ありがとう雨天」
陽愛はそっと雨天の肩に寄り添いお天道様みたいな笑顔を浮かべた。
――それから、二人の神さんがどうなったかって?
陽愛神社は綺麗に直されて、浅草川の氾濫を止めたと一層大切にされた。
江戸の町では陽愛神社の神さんを粗雑にすると雨天神社の神さんが怒ると噂になった。
隣り合う神様はこれを機に餅が焼けそうなほどの熱々ぶりさ。
人はそれを知ってか知らずか、また勝手に社を立てた。
雨天神社と陽愛神社の間に小さな社を。
そこにはこんな噂が囁かれる。三匹の白い狐の親子が社の周りを飛び回る姿を見ると、その年は豊作になる。
――そして小さな社に参ると子宝に恵まれる。
つくづく人は勝手だねぇ。まっ、そこが人の面白いところかもしれませんけどね。
隣り合う神様 直弥 @ginbotan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます