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土砂降りの雨のなか坊主が一人、人々の前に仁王立ちする。
押しのけられた子供を支えて社を壊そうとしている人々を怒鳴りつけた。
「なんだい坊さん。祟を鎮めるためにお経でもあげに来たのかい?」
馬鹿にしたように笑う人々に坊主は呆れたように声高に説教をした。
「勝手もいい加減にしないか! 手前勝手に神さんを呼んで祀って、ちょっと願いが聞き届けられなければ文句を言い追い出す? 自分たちの行動を顧みたらどうだい?神様に祟られても文句は言えないだろう」
「そんなこと言ったってもう仕方ないだろう!祟るなら追い出すしかないんだよ!」
人々は熱り立って坊主と子供を押しのけて陽愛神社に進んでいく。子供は涙目で坊主の顔を見上げると、坊主は深く息を吸い、腹から声を出し人々に怒鳴る。
「社を壊すというなら、最後にこの子が参ってからでも遅くないだろう! そこをどきな!」
凄みのある坊主の声に人々が大人しく社の前から退くと、坊主は屈んで笑顔を見せて頷き子供の背を押した。
「さっ、心を込めて参っておいで」
子供は頷くと陽愛の社に深く頭を下げて手を合わせる。
「神さん神さん。またお天道さんを見せてください!」
子供の隣で坊主も手を合わせて心の限り謝り願った。土砂降りだった雨が、段々と弱くなり黒い雲が薄くなっていく。
「雨が止んだ……」
その場の誰もが空を見上げて息を飲んだ。真っ黒な雲の隙間からお天道さんが顔を覗かせていた。
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