ふぐ屋と肉屋

@tshodai

第1話

 「僕を必要としている人は誰もいない。」

そう思いながら、僕はいつもの寂しげな席に座った。世の中に必要な人間とは?


引っ越し前はあんなに楽しみだったのに、1人暮らしの孤独感を毎日感じている。というのも、 大学に入学して、実家を離れ一人暮らしを始めた。大学の入学試験後に父親と物件探しに行って、即決したお気に入りの部屋だった。特に、真っ白なタイルが、何とも言えないくらい白くくて好きだった。しかし、最近はその白い床が僕を嘲笑しているように感じる。その理由は2つの寂しさにあった。

 1つ目に1人暮らしによる寂しさ。実家からの新居への引っ越し当日に、一緒に荷物を運んでくれた父親と別れた時は涙が止まらなかった。僕は、自分が想像していたよりも甘えん坊なんだと悟った。

2つ目に大学に入学して、友達を作ることができなかった寂しさ。これもまた、僕の胸に刺さる。入学式後のサークル活動やイベントに参加しなかったせいか、入学して3か月経っても1人で席に座って授業を受ける。もう6月だというのにこんなにもいつもの席の椅子はこんなにも冷たい。人の目を気にする僕にとったら、その行為自体が羞恥以外の何物でもない。1人暮らしと友達のいない大学生活による寂しさが今までに感じたことのないくらいの疎外感僕に感じさせる。またこの疎外感でなにもかもがどうでもよくなって、家に引きこもりだす。

「弱いな、俺・・・。」

そんなことは分かっているが、負の感情ほど強い感情はない。

そして、怠慢なひねくれた大学生になっていくのを、しっかり感じる2015年の梅だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ふぐ屋と肉屋 @tshodai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ