繰り返す夢
同じ夢を何度も見る。
私は奇妙な集団につけ回され、ついに廃病院の屋上へと追い込まれる。やむにやまれず飛び降りると、びくんと跳ねて、目を覚ます。この繰り返しだ。
夢のことを友人に話すと、彼らは決まって曖昧に笑い、いずれ終わる、とか、気にするな、などと言って話題を変えたがる。確かに他人の夢の話ほどつまらないものはないが、それにしては不審な態度だ。まるで怯えているかのような。
追われて、落ちて、目が覚める。慣れてくると、落下先の光景に意識が向くようになった。そして気づいたのだが、地上を閉める群衆の面子は夢のたびに異なる。彼らのほとんどは私に気づかない様子だが、私を凝視する者も稀にある。彼らの顔はいつも蒼白で、硬直している。
その日も落下の反動で目が覚めた。なんとなくポストを見に行くと、手紙が届いていた。差出人の署名はなし。部屋に戻って、私は封筒を開け、四つ折りの紙片を開いた。そこに一言だけ書かれた文章は、明らかに私の手によるものだ。曰く、
〈これは夢だ〉
その瞬間、私は目を覚ます。私は廃病院の屋上に居る。死者も夢を見るという知識を私はそこで得る。私はまた、幽霊は死の直前の行動を繰り返すという説を承認する。打ち所が相当良かったのか、私はあの集団が私の妄想にすぎなかったことを理解している。それでも私はここから飛び降りる他ない。まあしかし、いつかは終わる。気にするな。
超短編図鑑 平山圭 @penguin-man
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