最終回 10度目の転生なので生き方を決めてみた

あれから3か月が経つ。

今の私は廃人のような暮らしをしていた。髪もひげもだいぶ伸びた。

金には困っていないが、ただただ無気力に日々を浪費していた。

あの日以来、スマホの電源を切り、気が付けば外に出ることも少なくなって、

これまでの日々が自分の妄想なのではないかと思うほど生活が一変していた。

次の人生はない。私はこれを望んでいたはずだ。しかし、今はそれが恐ろしくて仕方がない。

純粋に死に対する恐怖が私を飲み込んでいる。

これほどまでに死というのは恐ろしいものだったのか。


ピンポーン

突然インターホンが鳴る。

ディスプレイに写されたのは、長3の封筒を持った郵便配達員だった。

私はけだるそうにドアを開け、配達員の顔を見ずにサインをして封筒を受け取った。

部屋に戻り封筒を見ると、送り人のところに月見里千歳と書かれていた。

あれ以来彼女とは会っていない。これから輝かしい人生が待っている彼女が私にはまぶしすぎたのだ。

その隣に私のような人間がいてはいけないと、彼女から距離を取っていた。

だがこの手紙が、彼女からということであればおそらく彼女はお師匠様の言う通り病に打ち勝ち生きているのだろう。

それには少しほっとした。

私は封筒を開けた。

中には3つ折りになった手紙が入っていた。


『拝啓、神田宗介様


お元気ですか?私はおかげさまで元気です。

私は最後に神田さんとお会いした時以来記憶がなく、次に目が覚めた時は病院のベッドの上でした。

お師匠様が泣きながら私を抱きしめていたので、正直何が起きたのかわからず困惑してしまいました。

事情を聴くと、どうやら私は癌で、もうすぐ死ぬ運命だったというのです。

それを助けてくれたのが神田さんだと聞いて私は本当に驚いてしまいました。

神田さんがワクチンを作ってくれて私を助けてくれたのだと聞きました。

本当にありがとうございます。感謝してもしきれません。


その感謝を伝えようと、神田さんに連絡を取ろうとしてもまったくつながらず、とても心配しています。

そして神田さんに会えないことが寂しくて仕方ありません。

この手紙も、何とか住所を調べて送りました。

だからもし、この手紙を神田さんが読んでいるのでしたら、

この場であなたに伝えたいことがあります。


私は、あなたのことを愛しています。


返事は、私の家に来てく教えてください。

返事をいただけるまで何年でも、何十年でもずっとお待ちしております。


PS,神田さんのラッキーアイテムは『タキシード』です。


月見里千歳』


読み終わると私は、「タキシードなんか一般庶民が持ってるわけないだろ」と笑ってしまった。

そして、初めて彼女に会ったときのことが頭の中を駆け巡り始めた。

そうだ、私は決めたじゃないか。

今回の人生は占いに従って生きると。

私は大急ぎで身支度を整え、美容室と紳士服店へと向かった。


翌日、私はタキシードに髪型をバッチリ決め彼女の家の前についた。

門を開け、扉をノックする。

すると、扉がスッと開き目の前には白の着物を着た月見里さんがいた。

彼女は目を潤ませながらほほえみ言った。

「いらっしゃいませ。ご用件は占いですか?」

「いえ、違います。月見里さんにお話があってきました」

私は玄関先で片膝をつき、彼女の手を取って言った。

「月見里さん、君とこの人生を過ごしたい。結婚してください」

「はい。よろしくおねがいします」

と彼女は笑顔で言った。

その笑顔は太陽のように眩しく、そしてとても可愛らしかった。


私はこの人生を彼女と過ごし、この奇妙な運命を終わることを決めたのだった。

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10度目の転生なので全部占いに従ってみた ハシダスガヲ @hashidasugao

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