記憶

女川 るい

記憶


 物忘れが激しいのでいつも日記を持ち歩いている。いまや広辞苑並みの厚さになってしまったが仕方ない。僕の人生と考えればこれでも足りないくらいだ。


 ある日、僕の日記が中身の全く異なるものにすり替えられてしまう。だが外見があまりにも酷似していたので、僕はそれに気づかない。


 自分のプロフィールなどに少し違和感を覚えたものの、そのまま生活していく。僕は僕の記憶より日記を信頼しているのだ。


 次の日から僕は僕ではない誰かとして生きていく。もちろん僕はそのことにも気づかないし、昔の名前すら思い出せない。

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記憶 女川 るい @badeyes

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