第2話:動き出す青春とロックンロール。
「え〜この春から皆さんは〜」
入学式、校長の話を聞きながら辺りを見渡す、櫻井さんを探すためだ
「あっ!」
見つけると櫻井さんもこっちを見て声を出さずに手を振ってくれた
「では、新入生退場」
教室に戻り、ホームルームと題して自己紹介が行われることになった
「く、栗田圭佑です!宜しくお願いします!」
自分の番になり、俺は言葉に詰まりながらも他の生徒は大丈夫かよと声をかけるだけで中学の頃のように気持ち悪がられることはなかった
「じゃあ次の子〜」
「はい!櫻井紅音です!趣味は音楽を聞くとこです!皆さん仲良くしてください!」
担任が声をかけると彼女はいつものように太陽のような笑顔で自己紹介をした、周りからもやはり、可愛い、スタイルいい、などの声が上がっていた
(当たり前だろ?俺が本気で好きになってもらうために高校もギターも覚えるくらいだぞ?)
と、心の中で俺は叫んでいた
「それじゃ次行こうか〜」
自己紹介が終わり、担任は部活について話はじめた、もちろん俺はギターに専念するため、軽音楽部に入部するつもりだ
「入部体験とかもあるから1週間ゆっくり決めてね〜、入ってから厳しくてやめるとか勿体ないからさ〜?いいねー?」
そもそも軽音楽部に厳しいとかあるのだろうか?まあ俺には関係ないか
「キーンコーンカーンコーン」
「それじゃ、今日から見学とかできるから時間がある人はいろんな部活見てきてね〜」
さっきから思ってたけどなんか軽いなこの担任は、なんかギャルっぽい・・・。
「えっと音楽室が合唱部で、軽音楽部は〜...」
「視聴覚室だよ?」
俺が部活案内表を見ていると誰かの声が俺の耳元でした
「うわぁっ!!」
「ごめん、驚かせちゃった?」
横を見ると櫻井さんだった
「ど、どうしたの?櫻井さん」
「私も部活見学しようと思って」
まっ、まさか櫻井さんも軽音楽部に?!!
「会いたい人が居てさ」
ん?今なんて言った?
「その人はカッコよくてすごいの」
な、何でそんな、え?櫻井さんて好きな人いたのか?
「じゃあ私こっちだから!またね!」
「うん....。」
モヤモヤとした気持ちになりながら俺は視聴覚室へと向かった
「し、失礼します」
「おっ?部活見学の子?入りな入りな〜」
ノックして扉を開けると、上級生であろう人たちが迎え入れてくれた
「これで全部かな?じゃあうちの部の説明してくから、よく聞いてくれー?」
新入生の部活見学にきた生徒は一か所に集められ、説明を聞く、それにしても結構な人数の新入生で意外と人気な部なんだとおもった
「うちは基本的に他校とやる事は変わらない、バンドを組んで活動していく、ただ他と一つ違う点は本気でやってるって事」
ドラムセットの前で上級生が僕たちに向かって説明すると他の上級生も集まって各々の楽器の前に立った
「将来本気でミュージシャンになりたい子、プロでやっていく、そんな人間がうちには必要なんだ、試しに演奏するから聞いててくれる?」
俺はこの時違和感を感じていた、自分との温度差だ、俺は櫻井さんにお近づきになりたくて高校もギターも覚えた、別にプロになりたいわけじゃない
「ジャカジャーン!!!」
俺は上級生の演奏を少し聞いただけで鳥肌が立った、音楽とは、こんな迫力があって凄まじい物だと思っていなかった
「ありがとう!」
演奏が終わると上級生たちは皆んな俺たちに向けて挨拶した、俺はこんな所でまだギターのコードでさえ少ししか覚えていない自分がやっていけるのかと思った
「ここに来てくれたみんなが本入部してくれる事を願ってるよ、今日はこの後各バンドでパート練習をするから、見たい人は残っていいよ」
俺は悩んだ、どうしようと、だけど上級生がした演奏は俺が目指した櫻井さんが好きなバンドの音色とは根本から違うような気がした
「あ、あの、この部ってさっきみたいなバンドばっかりなんですかね?」
「ん?あ、君、新入生?どんなバンドが好きなの?やっぱ邦楽とかかな?」
その先輩が口にするバンドはほぼ日本で活躍するいわゆる旬なバンド名だった
「い、いや、
バンビーナとはイギリスで活躍するロックバンドで櫻井さんが好きなバンドだ
「ふーん、君、そう言うのが好きなんだなら、第2視聴覚室へ行くといいよ」
「ここじゃないんですか?」
俺は頭に疑問を抱えながらも第2視聴覚室へと向かった
「失礼しまー・・・。」
扉を開けるとそこには2人の男子生徒と櫻井さん、一見普通だが、櫻井さんは片方の男子生徒の腕に抱きついていた
「お、お邪魔しました!!」
俺は開けた扉を思い切り行き良いよく閉めて自転車が止めてある駐輪場へと走った
「クソッ!!」
自分がこの数ヶ月やってきたことが水の泡になった気がした
「好きな奴がいるなら言えよ!!」
そう叫びながら涙を流し、自転車漕いだ
「ただいま」
「おかえり、今日ご飯カレーでいい?」
帰ると母がいた、俺には母の問いかける気力は
残っていなかった
「クソッ!クソッ!」
自室に戻ると止まったと思った涙がまた溢れ出してきた
「こんな物!!」
俺はギターを取り出し、床に叩きつけようとしたができなかった
「お前にあたってもしょうがないよな」
そう呟き、俺はレスポールをそっと戻した
翌日、嫌々ながらに登校し、放課後ヤケになった俺は他の部活も見てみようと思った、今更他に興味のある部活なんてないけど...
「あっ!栗田くん!待って!」
櫻井さんだ、俺に何を待てと言うんだ
「昨日はごめん!」
「いいよ謝んなくて」
俺はきっとすごく冷たい顔をしているんだろうと思いながらそう呟いた
「栗田くんに会わせたい人がいるの!」
「昨日の人?」
聞くと櫻井さんは首を縦に振った
「何で?」
「いいから!」
俺は行きたくなんてなかったけど彼女に頼まれて着いて行くことにした
「ガチャ」
櫻井さんが俺の腕を引きながら第二視聴覚室の扉を開けた
「連れてきたよ!」
「ん?紅音か?」
昨日、櫻井さんに腕を抱かれていた男子生徒がいた
「よっ、ごめんな?急に、話があってな」
どうせ付き合ってることを黙ってろとかそういうのだろうと思った俺は先に自分から言うことにした、何故ならこの場から早く逃げ出したかったから
「あ、あの!お二人がお付き合いしてる事は誰にも言いませんから、ですから....。」
その男子生徒と櫻井さんは俺を見てきょとんとした表情になった
「ん?何の話だ?」
「え?」
俺は頭をフル回転にさせて昨日の場面を思い出した
「俺と紅音は兄妹だぞ?」
俺は口をぽっかりと開けてその場に立ち尽くした、昨日あんなに大泣きしたのが全て勘違いだったのかって
「え?でも、カッコいい人が居て会いたいって言ってなかった?櫻井さん?!」
「そうだよ?今お兄ちゃんと私、訳あって別々に暮らしてるの、だから会いたいなって」
マジかよ....。
「まぁ、そんな話はいい、今日お前を呼んだ理由を説明するぞ?いいか?」
「は、はい!」
俺は回らない頭を少しでも回して返事をした
「お前、ロックは好きか?」
聞かれた瞬間俺は即答した
「はい!好きです!」
「ふーん?どんなの?」
興奮する俺を見ながらその男子生徒は俺に再度聞いた
「
「おぉ、分かる奴がまだいたか」
俺は受験勉強をしながら少しずつ聴いたイギリスのロックアーティストの名前を言った
「楽器は何を?」
「ギターです!」
答えるとふーんと男子生徒はつぶやいた
「俺は
「えっ、でもそんなに弾けませんよ?」
誠さんはいいからと首を振り、俺の軽音楽部入部は決まった
「し、失礼します、入部届け出しに来ました」
翌日の放課後、重いレスポールを持ちながらおれは部室へと向かった
「おぉ、君か?どう?考えは変わった?」
入ると第二視聴覚室の場所を教えてくれた先輩が話しかけてきた、俺はその先輩がする質問の意図がよくわからなかった
「何がですか?」
「だって今時あいつらみたいなのって流行らないだろ?だから考え変わったかなって」
俺はまだ部員になってもいないがその先輩が言う言葉がムカついた、俺の好きな人の好きな音楽を馬鹿にされた気がしたからだ
「じゃあ、これで」
俺は腹を立たせながらも入部届けだけ提出し、すぐに第二視聴覚室へと向かった
「圭佑、来たか!」
ドアを開けると誠さんと最初に見たもう1人の男子生徒と櫻井さんがいた
「栗田くん〜!来てくれたんだ!」
「こいつが噂の?」
その人に初めましてと挨拶すると、よっ!っとし返してくれた
「俺は
椎名先輩は熱そうな人で悪い人ではなかった
「んじゃ改めてようこそ、the rogueへ圭佑」
ザ・ローグ、ならず者って意味か、かっこいい!
「とりあえず弾いてみな?そこアンプな?」
「はい...」
俺は緊張しながらBanbinaの曲のソロ部分を弾いてみた
「おっけおっけ、圭佑、もういいぞ、弾けないって言ってたけどこれほどとはな」
誠さんは耳を指で塞ぎながら俺に言った
「ていうかそれお前どこで手に入れたんだ?」
「え?父からもらいました」
レスポールを指差しながら聞く誠さんに俺はそう答えた
「そうか、大事に使えよ?そんな事よりあとはベースがいれば良いんだけどな」
「え?!ベースの人いないんですか?」
俺は声を大にして聞くと、それと同時に扉がノックされる音が聞こえた
「コンコンッ、」
「お前、本当に来たのか」
扉を開いた生徒を見て誠さんは頭を抱えた
「言ったでしょ?誠さんとplayしたいって」
「このバカベーシストが」
ベーシストと聞いて俺は、あっ、なんだ居ないわけじゃないんだなと思った
「とりあえずメンバーは揃った、後は1週間でどう形にするかだな」
1週間?俺はその言葉を聞いて疑問を浮かべた
「1週間後に何かあるんですか?」
「お前らの歓迎会だよ」
俺はなるほど、そこで演奏するだと思っただが新たな疑問が浮かんだ
「新入生歓迎会なのに俺も出るんですか?!」
「そうだぞ?人がいねーししかたねーだろ?それに俺らはそこで奴らより沸かせられなかったら解散だからな?」
俺の頭の中には何故?の2文字が浮かんでいた
「少し因縁付けられちまってな勝負してんだ」
「森崎って奴に喧嘩売られてな?誠ってばその喧嘩すぐ買ってやんの!!笑えるよなー!」
椎名先輩が言う森崎って言う人は確かさっき俺に考え方変わったかって聞いてきた人だよな?
「きっと誠さんのplayに嫉妬してるだけだよ」
先程入ってきたベースの彼が呟く
「涼、圭佑に挨拶しろ」
「どうも」
誠さんが彼に言うと彼はクールな感じで僕に会釈した
「とりあえず圭佑をどうにかしねーとだな」
「俺とマンツーで練習すりゃいいだろ」
俺はまたも頭に疑問を浮かべた
「誠さんもギターなんですか?それじゃギターが2人になっちゃいますよ?」
「ギターはな、リズムギターとリードギターってのがあってな、別に2人いてもいいんだよ」
そうなのかと、思いながら感心してしまった
「そんじゃあいつらぎゃふんといわせっぞ!」
「おーー!!!」
俺は自分の中の何かが動き出していくのが感じた、冴えない俺だけど何かが今までと違うと
「栗田くん!頑張らないとだね!」
そう呟く彼女をただ音楽で笑わせたくて。
俺、モテたいからギターやる!! @asadarumadesu
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