この物語はノンフィクションです。

もやっしー

第一章「拮抗」

第1話「自殺とは。」

「自殺したくないんです。助けてください」

 

 それは少女の悲痛に満ちた懇願だった。


 死とは何なのだろうか。


 それは誰しもが延々と続く生きるという旅路の中で一度は考えたことがあろう模範解無き問いである。もしも模範解が出たのであればその人は神だ。崇拝し、崇拝されてよい。


 しかしながら端的に、既成概念的に言うのであれば死とは命が尽きる事である。生きて生きて生き抜いてその先にあるのが死だ。死の瞬間というのもまた、誰にも予測できない、ある一つの場合を除いては。

 延々と続くと言いつつもそれが途切れるのはある日突然、忽然としてなのだから。


 ある場合というのはどのような場合なのだろう。


 ——自殺。


 それが死の瞬間が分かる勇逸の死に方だ。自らの命を自らで絶つのだから。


 生きて生きて生きて死に始めて、そして死ぬ。人が自殺するのには一概には言えない多様な理由がある。家族関係、友人関係、病気、離婚。理由ができた時、悲しき人生の転機が訪れた時、それが死に始めるということである。普通ならばそこから嬉しい転機を迎えることができるのだろうけれど、それができなければ自殺という選択をする場合がある。


 しかし、死に始めてから死ぬまでの時間というのはさほど長いわけでもなく短いわけでもなく、つまり第三者の手で踏みとどまらせることが可能なのだ。


 恣意的に、強制的に。

 

 果たして自殺するのは善か否か。自殺を止めるのは善か否か。

 それについては大激論が生じるだろう。


 それは個人個人の観念であり、通念ではない。






 だから、この物語は不甲斐なき作家の観念である。

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